2018年10月25日

多民族国家

「我が国の経済発展を願い、外国人労働者の受け入れ拡大のための法改正を致します」
「しかし、ソーリ、これは事実上の移民受け容れ宣言ですね。ただ、外国人が研修生という名目で酷使されている現状を考えますと」
「日本人と外国人の賃金格差の是正を致しますので」
「でも、それによって国民の賃金が低下する恐れが」
「経済は需要と供給のバランスによって成り立ってますから。平等が大切です!」
 新聞には「移民受け容れによる多民族国家日本」という見出しが出た。ところが、記者の恐れていた通り、法改正をしても外国人労働者は増えず、日本から海外に出かせぎするのが流行になった。日本人の流入で多民族国家になったのは、相手国の方だった。


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2018年10月24日

河瀬直美の「あん」

 ドリアン助川の原作で、監督は河瀬直美。主人公の徳江を演じたのは、今年九月に亡くなった樹木希林。どら焼き店の店長千太郎を永瀬正敏、常連の女子中学生ワカナを、樹木希林の孫の内田伽羅、徳江の友人佳子を市原悦子が演じた。
 ハンセン病患者は、かつて不治の病として強制隔離されていた。隔離が終わってからも、身寄りのない人々は施設で暮らしている。人々の偏見はいまだになくならない。
 徳江は餡作りの名人で、隔離されて奪われた人生を、外の世界で働くことで取り戻そうとしている。徳江の作った餡を入れたどら焼きは、おいしいと言って評判を呼ぶ。裏方で餡作りだけしていた徳江は、店の表で働くようになり、中学生のワカナと親しくなることで、人間らしい喜びを取り戻すようになる。
 しかし、徳江がハンセン病を患っていたことが噂になり、どら焼き店は客足が遠のく。徳江は辞めざるを得なくなり、施設でこもりっきりの生活に戻る。ワカナは家で飼えない小鳥を連れて、千太郎とともに徳江を訪ねる。あれほど生き生きしていた徳江は、生きる張り合いをなくし、すっかり気力を失っていた。入れ歯を抜いていたこともあるが、表情の落差を演じきっているのには感嘆した。
 徳江は籠に入れられた小鳥が、施設に隔離された自分のように思えて、外に放してしまう。ほどなく徳江は消え入るように亡くなる。その最期を、友人の佳子が千太郎とワカナに語っていく。実話そのものであるかのように、飾りっ気はないのだが、心にしみるドキュメンタリーを見た気がした。観客に問題意識を投げかける作風である。
 樹木希林が最後に主演した映画で、この時期にはすでに自身の命が長くないことを悟っていたのだろう。束の間の喜びを胸に抱いて、この世を旅立つ徳江の姿に、迫り来る自身の最期を重ねて演じていたのか。

 僕が生前の樹木希林をテレビで最期に見たとき、すでに体調が良くなかったのだろう。歩き回るのもつらそうだった。末期癌であるとともに、喘息の発作にも苦しんでいた。身の回りの整理をしているようだった。癌を克服したと言われていたが、癌はそんな生やさしい病ではないと強調していた。余命を宣告されていたからだろう。
 樹木希林は二十代の頃から、お婆さんを演じていた。僕が初めて樹木希林の演技を見たのは、朝ドラの『はね駒』(はねこんま)においてだった。斉藤由貴演じる女性記者りんの母やえを演じていた。味のあるユーモラスな演技が印象に残った。あれから三十年以上の歳月が流れている。


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2018年10月23日

大山は「おおやま」にあらず(3)

 いよいよ登山が始まった。しばらくは石を埋め込んだ石段が続く。表面の凹凸が靴底に当たって痛い。底の厚い登山靴を履いてくるべきだった。次には木を横に渡した階段が続く。一段の高さが高い上に、傾斜がきついので息が切れる。ただ、今日は体調がいいからそれほどつらくはない。ブナ林の間を行くので見通しは余り良くない。
 一合目から二合目までは長かった。それから無心で登り続けたら、五合目の先にある行者谷コースとの合流点には、二時間ほどでたどり着いた。帰路はそちらを通ることにした。
 六合目には避難小屋があった。コンクリートの壁に扉と窓がはめ込まれた簡素な造りである。伯耆の大山は古い火山で、白い安山岩は風雨でぼろぼろに砕けていく。今登っている弥山も、一万七千年前の噴火による熔岩円頂丘だという。しかし、有史以来噴火記録もなく、火口も火山ガスも見当たらず、言われなければ、大山が火山とは気づかないだろう。ここで持ってきたチュロッキーを食べた。少し元気が出てきた。(つづく)


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