2018年10月31日

大山は「おおやま」にあらず(7)

 あとは下りだと思ったが、小石だらけの階段を進むのは容易ではない。登り以上に細心の注意が必要だし、筋肉疲労で下半身が思うように動かない。足を下ろした途端、尖った石が靴底に刺さるように痛い。危ないところは手をついていたが、バランスを崩して、ズボンに泥がついてしまった。
 六合目を過ぎたところで、道は二手に分かれた。行きと異なる行者コースをたどることにした。ただし、こちらは階段が細かくても、梯子のように傾斜が急で、足が滑れば谷底に転げ落ちてしまう。また、道が分かりにくく、周囲に誰もいなければ迷いかねない。
 岩崩れした沢に出た。砂防ダムには下りず、元谷避難小屋に上がっていくと、先に細い道があるように見えた。前を歩いていた青年が、茂みの中に消えていった。一方、沢を歩いていた別のグループは、ステッキでこっちですよと合図してくれた。よく分からないが沢に下りて、砂利の上を横断していった。(つづく)


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2018年10月30日

外遊好きのATM

 今は昔、核戦争で人類が原始時代に戻る前のこと。大陸の東にあった島国のATMが、人工知能の誤作動により、勝手に入金と出金の処理を始めてしまった。そればかりか、ワープ(瞬間移動)する術まで習得する始末。
 当時は高額紙幣も廃止されており、デジタル通貨中心になっていた。ATMは国王気取りで外遊して首脳と会談すると、湯水のごとく大金をばらまき始める。褒められると条件反射で、相手国の口座に振り込んでしまうのである。
 暴走したプログラムのせいで、島国の財政はついに破綻寸前に。そこで、同盟国の協力のもと、おだてられたATMが演説を始めたところで、ワープする隙も与えずに、全電源を喪失させたとなむ語り伝へたるとや。


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2018年10月29日

大山は「おおやま」にあらず(6)

 多様な草花に比べて、樹木の方はみな灌木である。ダイセンキャラボクは特別天然記念物に指定された木で、周囲に多く群生している。針葉樹の一種で雌雄が別株、雌株には赤い実がつくという。林は崖の端まで広がっている。
 その先に石室があった。そこは大正期に寄付金で作られた避難小屋で、すでに屋根の部分が崩れかけている。奥には神さまが祀られ、祠のようになっている。その左方には二つの池がある。地蔵ヶ池と梵字ヶ池と呼ばれ、僧侶と山伏が経筒に写経を納め、池の水を閼伽として桶に汲み取り、下山したと言われている。
 いったん下ったところで、また木の階段を登っていく。山頂まで来たらあとは下るだけだと思っていたが。花が咲いていないか、見回しながら進むので、だいぶ後れを取ってしまった。その様子を友人は、はらはらしながら眺めてたそうだ。このままだと予定のバスには乗れないと。(つづく)


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