2018年08月15日

ぼくがダライラマ?(51)

               七

 それから悶々とした日々が続いた。ぼくは自分がとんでもないもめ事に、巻き込まれようとしているのを感じた。摂政の娘からの申し出を無視してしまったら、あの女は嘆き悲しむだろうが、やがて父親の命じるままに貴族に嫁ぎ、平凡ながらも幸せな一生を送るだろう。
 ただ、ポタラ宮で仏教を学び、与えられた政務をこなすことが、延々と続くのではないかと思うと、やり切れない思いにかられるのだ。あの娘に近づかない方がいいと思うほど、摂政の屋敷でよこした文の言葉、ただの一度でいいから一対一で話したいという言葉が、女の声となってよみがえってくるのだった。
 夜になって一人で部屋にこもるとき、ぼくは同じことばかり考えていた。もし会いに行かなければ、行かなかったことを悔いて、会ったときのことをあれこれ空想して、かえって心が乱れるのではないか。それなら、会ってあとは、なすがままにまかせればいいじゃないか。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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2018年08月14日

高野敦志編『高野邦夫詩撰』(ePub)

 高野邦夫は昭和3(1928)年、現在の川崎市幸区に生まれました。太平洋戦争末期に予科練に入隊。戦場に送られる前に終戦を迎えました。戦後は国語の教員を務めるかたわら、詩を書き続けました。日本詩人クラブや俳人協会の会員でした。その詩は自らの戦争体験や動植物、猫や蝶などへの共感、家族、とりわけ母、高野ことへの思いを中心につづられています。中でも『定時制高校』や『川崎』などは、各種の新聞でも取り上げられました。糖尿病や腎臓病と闘いながらも、晩年に到るまで詩作に集中しました。平成9(1997)年、手術後の体力低下に伴う敗血症がもとで亡くなりました。享年は68歳でした。
 すでに長い年月が経ち、父の著作の多くは絶版状態です。そこで、私がそれらから比較的読みやすく、心に響く詩を厳選してここに紹介いたします。下のリンクをクリックしてダウンロードして下さい。なお、原文の改行位置を尊重したために、不自然な位置で改行されて表示された場合は、字の大きさを若干小さくしてご覧下さい。
kunionoshi.epub

 iTunesからダウンロードする場合は、ミュージック→iTunes→iTunes Music→podcasts→当該のフォルダの下に、ファイルが入ります。
 IEでダウンロードした場合は、拡張子をzipからepubに変えて、下記のアプリでご覧下さい。

 ePubはiOSのiPadやiPhoneなどで読むのに適した形式です。iBooksなどでご覧下さい。Windowsでは紀伊國屋書店のKinoppy(http://k-kinoppy.jp/for-windowsdt.html)が、最も美しくePubのファイルを表示します。

 ブラウザからePubを開く場合、Edgeならプラグインなしで読めます。Googleのchrome(https://www.google.co.jp/chrome/browser/desktop/index.html)なら、プラグインのReadium(http://readium.org/)をインストールして下さい。
 firefox(https://www.mozilla.org/ja/firefox/new/)にもプラグインのEPUBReader(https://addons.mozilla.org/ja/firefox/addon/epubreader/)があり、縦書きやルビなどにも対応しています。

 なお、パソコンのiTunesで「購読」したり、iOSのアプリpodcast(https://itunes.apple.com/jp/app/podcast/id525463029?mt=8)でマイpodcastに登録すれば、確実に新しいエピソードが入手できます。 


以下に高野邦夫の著作を挙げます。

詩集

『寒菊』(1962 五月書房)
『氷湖』(1978 昭森社)
『燦爛の天』(1980 昭森社)
『定時制高校』(1982 昭森社)
『川崎』(1983 昭森社)
『修羅』(1984 昭森社)
『彫刻』(1985 昭森社)
『曠野』(1985 芸風書院)
『銀猫』(1986 昭森社)
『日常』(1987 昭森社)
『川崎(ラ・シテ・イデアル)』(1989 教育企画出版)
『短日』(1991 吟遊社)
『峡谷』(1993 吟遊社)
『鷹』(1994 吟遊社)
『敗亡記』(1995 吟遊社)
『廃園』(1998 遺稿 吟遊社)

句集

『高野邦夫句集』(1987 芸風書院)


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posted by 高野敦志 at 04:01| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年08月13日

島でなくても桜島(1)

 日豊本線に乗っていた。鹿児島県内に入ると、左方に桜島が見えてきた。竜ヶ水の辺りは、数年前に大水害があった所だが、対岸に桜島が望まれ。手前が入江になっており、日射しが青い海を照らしている。南国らしい風光だと思った。
 桜島は錦江湾にそびえる火山島だったが、1914年(大正3)の大噴火で、大隅半島と地続きになってしまった。桜島も危険な火山ではあるが、本体は錦江湾の底に眠っている。巨大カルデラ噴火で、吹き飛んだ大地に海水が入り込んで、広い湾となっているのである。
 当時はまだ九州新幹線は開通していなかった。鹿児島駅は意外に小さかった。市電に乗り換えて市役所前で下り、鶴丸城跡へ向かった。そこには石垣と堀のみが残り、跡地には資料館が建っている。
 この城はもともと天守閣がなく、屋形づくりとなっていた。それは「城をもって守りと成さず、人をもって城と成す」という薩摩藩の理念によるもので、兵農一致の郷士団が多数組織され、武士の数が非常に多かった。一般には五公五民であった年貢も、薩摩藩では八公二民の高税率となり、農民の不満を団結へと導きやすい浄土真宗は、切支丹とともに禁教とされたのである。(つづく)


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