2018年06月29日

阿蘇は生きている(8)

 今度は草千里の左方にある丘に登った。ここからは中岳が迫って見える。下のカルデラには人っ子一人いないので、広大な草の窪みを我が物としたような気になった。
 向かいの先ほど登った丘では、数人の人影が動いている。ふざけ合った声が伝わってくる。耳を打つ風の音が聞こえた。独りになるのがこれほど心地よいとは、今まで思ったことがなかった。町の中で見知らぬ人に囲まれているのとは対照的な、安らぎに満たされていた。大自然の懐に抱かれるというのは、こうした感覚を言うのだろう。
 午後五時過ぎのバスで、ユースホステルに戻ってきた。ただ一つ、気がかりだったのは、山上までついてきた黒い犬のことである。あの人なつっこさが災いして、草千里に取り残されてしまったのではないかと思ったからだ。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 04:24| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする