2018年05月28日

地獄もいろいろ(1)

 僕が初めて九州に行ったのは、まだ三十代に入ってほどない頃だった。新幹線で広島の知人に会い、厳島神社に参詣した。翌日の午後に博多行の新幹線に乗った。日豊本線の「にちりん33号」に乗り換え、別府に着いたのは午後五時だった。
 その夜は別府のユースホステルに泊まった。すぐに夕食を取った。若い人が多いのかと思ったが、温泉地であるせいか、同室は年配の人ばかりだった。梅原猛の本を愛読するおじいさんは、遣唐使が水の補給を行った福江島の港を一目みたいと言っていた。帰りに終戦時に除隊した佐世保に寄りたいと言っていた。
 二十年前には戦争体験者が大勢いた。伯父は特攻隊員で、あと一週間戦争が続いていたら、敵艦に突っ込んでいたはずだった。父も予科練に入隊していたから、丸太で腰を叩く「精神注入棒」の話などしていた。敵基地をミサイルで攻撃するとか、空想的な戦争オタクなどは、一喝されていたことだろう。
 ユースホステルの風呂は温泉だった。しみ通るようにつかえが拡散していった。何度も浴槽に出入りするうちに眠くなった。ベッドの中に入ると、低くうなるような音がした。外はひどい降りになっているようだった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:41| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする