2018年05月22日

しまなみ海道は尾道から(8)

 円柱状の展望台に上ると、屋上に出られる。そこからは尾道水道の全体が見渡せる。東側の新尾道大橋はかすむほど彼方にある。しまなみ海道を走る車が通るが、街の中心から向島に渡るのは、今でもフェリーが現実的なのだ。すでに午後三時を回っており、西側の水面は白く光っている。
 千光寺に行ってみることにした。ただ、昨日弥山を急いで下ったせいで、かなり足が痛い。引きずるようにして、一歩一歩下りていく。こんな具合では、猫を探して尾道駅まで路地を巡るというのも、所詮は無理な話だったのである。
 尾道は文人に愛された町でもある。文学の小径には十返舎一九の「日のかげは青海原を照らしつゝ 光る孔雀の尾の道の沖」という短歌や、正岡子規の「のどかさや 小山つづきに塔二つ」という俳句、志賀直哉の『暗夜行路』や林芙美子の『放浪記』の一節を記した看板が並んでいる。途中で狭い岩の間を過ぎる。千光寺はさらに下にあった。
 真言宗の古刹で、正式には大宝山権現院千光寺という。多くの伽藍が急斜面に建っている。十二支の守り本尊の石像が並んでいる。本尊千手観音は秘仏なのだそうだ。線香の煙が流れ、崖にそそり立つ本堂の奥から読経の声が聞こえる。いかにも霊場という感じがした。本当はゆっくり巡りたかったが、そんな時間はないと友人に言われた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:15| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする