2018年05月14日

番外篇の『虹をつかむ男 南国奮斗篇』

 これは『男はつらいよ』とは関係がない。また、前作の『虹をつかむ男』とも設定が異なっている。前作では「オデオン座」は四国の山あいにあったはずだが、鹿児島という設定に変わっている。亮も葛飾柴又でサラリーマンの両親と、マンション住まいをしていたはずだが、今回は戸越銀座にある平山工務店の息子という設定である。
 東京に出てきた映画館の館主活男は、酒をめぐるトラブルから、錦糸町警察の留置場にいる。身元引受人として、以前活男の映画館で働いていた亮が呼び出され、亮の家族の厄介となることに。ところが、風呂桶を壊すやら、熱い鍋の載ったお膳を引っ繰り返すやら。おまけに、ものすごいいびきをかいて、さんざん迷惑をかけて翌朝出て行く。
 秋葉原の電気店を解雇された亮は、父親と喧嘩して家を飛び出す。向かった先は鹿児島の「オデオン座」。すでに閉館しており、行方を捜してたどり着いたのは、奄美の喜界島。そこで亮は、子連れのシングルマザー節子と知り合う。ただ、節子には荒くれ者の兄がおり、妹が東京の男に捨てられたことに怒りを抱いている。節子に好意を持った亮に対して、理不尽な暴力を振るう。
 その頃、亮はふたたび活男のもとで、映画の移動上映の助手として働くようになる。なぜ「オデオン座」が四国の山あいから鹿児島に変更されたか。それは場面を奄美の島々に移すためには、四国からではあまりに唐突だと感じられたからだろう。また、亮の家族が変更されたのも、『男はつらいよ』とは無関係の作品として設定したかったからだろう。
 活男の方も、昔映画館で働いていた松江と再会し、ボートの中で熱い夜を過ごす。ただ、松江は夫も子供もいる身である。一夜の夢でしかなかったはずなのに、活男は松江の自宅に押しかけていき、迷惑がられてしまう。何事も本音で生きていく活男は、『男はつらいよ』の寅次郎のように、失恋を運命づけられているのだろう。
 ただ、『虹をつかむ男』は二作をもって制作が打ち切られた。活男自身、魅力的な人物として描かれているが、映画の移動上映をしている設定では、バリエーションを生み出すことが難しい。また、亮という青年も純情で好感が持てるが、寅次郎のようにアウトローとして生きる人間ではない。いずれ結婚して、平凡ながらも幸せな家庭を持つはずである。その人生の一時期を切り取った作品としては、ほのぼのとした映画に仕上がっている。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:48| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする