2018年04月09日

男はつらいよ 拝啓車寅次郎様(第47作)

 満男は靴会社のセールスマンをやっている。仕事に身が入らないと、専務にとがめられている。そこで、柴又に帰郷した寅次郎が、物を売るためのコツを満男に伝授する。翌日、寅次郎は満男の会社に挨拶に行くと言い張り、おいちゃんと大喧嘩して飛び出したと、さくらは電話で満男に伝える。大喧嘩が一種の見せ場だったはずだが、それが実演されないのは、寅次郎役の渥美清の癌が肺に転移し、ドクターストップがかかっていたためだという。
 そのせいか、今回の寅次郎は台詞の数も少なく、威勢よい演技も余り見られない。淡々と演じている感じである。写真が趣味の典子と出会い、湖面を見つめながら夫婦というものについて語り合うのだが、近江長浜の曳山祭りに出かけようとするところで、典子の夫が現れたために、中途半端な感じて二人の関係も終わってしまう。
 代わりに活躍するのが甥の満男で、先輩の信夫に呼ばれて長浜に遊びに行く。そこで、信夫の妹菜穂と親しくなり、互いに引かれるようになる。ただ、満男には泉という恋人がいたはずである。喧嘩別れしたわけではないのに、泉とは音信不通になっているようで、その理由も明らかにされていない。前回は瀬戸内の琴島で亜矢に恋をし、今度は菜穂に引かれている。失恋を繰り返す寅次郎の後継を、満男は託されているかのようである。
 それにしても、渥美清の精神力には感服する。役者は親の死に目にも会えない仕事だ、と言われるが、病気になってもゆっくり養生することすらできない。若い頃に結核を患い、肺の片方を失いながらも演技を続け、肝臓の癌が残された肺に転移した後も、医者の忠告を退けて出演を引き受けたわけだから。渥美清は一九二八年(昭和三)の生まれで、いわゆる昭和一桁の世代である。僕の亡父と同い年で、病魔と闘い続けた姿が重なってしまう。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:19| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする