2018年04月03日

男はつらいよ 寅次郎の縁談(第46作)

 就職活動で一向に内定が取れない満男は、父親の博と喧嘩して家出してしまう。行く当てもなく乗った列車は高松行き。すでに瀬戸大橋線が開業しており、たどり着いたのは瀬戸内の琴島という小島である。かつて船乗りだった老人と、愛人に産ませた娘葉子が暮らす家だった。
 満男はその家に世話になりながら、漁師の船に乗ったり、畑仕事を手伝ったりして生活している。今では診療所の看護婦亜矢に、恋心を抱くまでになっている。満男には泉という恋人がいたはずだが、今では島の娘とよろしくやっているのである。何だが恋をしては破れる寅次郎に似てきている。
 家出した満男を迎えに来た寅次郎だが、船が欠航して居座る羽目になる。病み上がりの葉子と親しくなり、金刀比羅宮や栗林公園へ観光に出かける仲になっている。葉子と寅次郎の心の触れ合いが前面に出ており、従来のシリーズに似た印象が感じられるのだ。
 本作は「寅次郎の縁談」とあるが、寅次郎の縁談話があるわけではない。いつものように恋をして、また別れるというパターンである。ただ、久し振りに元気のいい寅次郎を見たという気がする。恋をすると人間は生き生きするものだ。寅次郎は葉子に好かれ、自ら身を引いていくのだが、二人の別れ方が自然で、ともに心が傷つかない点が大人の恋という感じがする。
 また、屈折した満男が心の傷を癒していく様子も、見ていてすがすがしい。島を去る満男に悲しむ亜矢も、正月には新しい恋人を作っている。「満男、おまえはふられたぞ。ざまを見ろ」と寅次郎は言うのだが、甥の満男を見守るまなざしは優しい。
 久し振りに快作を見たという気がした。見ているこちらも、さわやかな気分となった。それは葉子を演じた松坂慶子の魅力にもよるところが大きい。「浪花の恋の寅次郎」以来の出演だが、あんなに美しいのに、裏表がなく率直に物を言う姿が、男性の心をとらえて離さない。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 04:23| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする