2018年04月17日

厳島神社と弥山(8)

 ただ、山頂にはまだ到達していない。巨石が横倒しになり、人がようやく通れるほどの隙間が空いたくぐり岩を抜けたところで、ようやく弥山の山頂、五三五メートルに至った。三百六十度青い空を見渡せる。巨石が並んでいるさまが不思議だ。宇宙人が運んできたというわけでもあるまいが。
 友人と記念撮影をした。展望休憩所はすでに閉鎖されていた。時計を見ると、もう午後五時ではないか。片道三時間もかかったのか。晴れ上がって風もない。瀬戸内海は凪いで、黄金色に輝いている。ようやく気持ちも晴れた。
 弥山巡りをして下山することにした。潮の満ち干に合わせて、中の水位が変わる干満岩や、幹をくり抜いたような形の舟岩の横を過ぎると、大聖院の大日堂が見えてくる。神仏習合の時代には、厳島神社の別当寺として栄えた。胎蔵界と金剛界の大日如来を祀っている。さらに下ると、厳島神社の奥宮である御山神社、その先には仁王門が建っている。ただ、今の門は台風で倒壊した後、二〇一二年(平成二四)に再建された物。安置された仁王像は、中国の観音聖地普陀山より贈られた。(つづく)


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2018年04月16日

男はつらいよ 寅次郎紅の花(第48作)

 渥美清は末期癌で、医師の反対を押して出演した「男はつらいよ」のシリーズも、本作での演技が最後となった。没後に「寅次郎ハイビスカスの花 特別篇」が作られたが、寅次郎に関しては、かつての映像などを再構成したものである。
「寅次郎紅の花」が封切りとなるとき、いよいよこれが最終作になるだろうという噂が流れた。渥美清の体力が限界に達していたこと、寅次郎にとって最高のヒロインであるリリーが出演していること、映画が制作される前のテレビ版では、ハブを捕りに奄美大島を訪れた寅次郎が、ハブに噛まれて命を落としたことなどが挙げられる。
 冒頭で寅次郎が、阪神大震災でボランティアをしている姿が放送され、柴又のおいちゃん、おばちゃん、さくらたちを驚かせる。これは当時の世相を反映した枕のようなエピソードである。
 その頃、長い間音信が途絶えていた泉が訪ねてくる。縁談がまとまったことを、満男に告げに来たのだった。泉としては、満男に反対してもらいたかったのだろうが。ショックを受けた満男は、無断欠勤して津山に向かい、泉の結婚式をぶち壊す。そのまま、列車と船を乗り継いでやって来たのは、奄美群島の加計呂麻島。満男は崖から飛び降り自殺することも考えていたが、たまたま居合わせたリリーに呼び止められる。
 リリーに連れてこられた家には、居候している寅次郎がいた。風来坊の伯父に似てきた満男と寅次郎の対面は、偶然の一致にしては出来過ぎているが、話の展開としては面白い。寅次郎とリリーは網走で出会った頃から、今までどんなことがあったか回想する。これは、「男はつらいよ」というシリーズで、寅次郎とリリーが共演した過去を懐かしむことであり、渥美清という俳優が後半生を、車寅次郎という役で演じ続けたことを顧みることでもある。
 泉の結婚式をぶち壊した満男について、寅次郎は男にとって引き際が大切だと説く。しかし、リリーから見れば、それは恰好を付けているに過ぎない。男と女の仲はきれいごとじゃ済まない、女は男に本気でぶち当たってきてほしいというのである。寅次郎が生涯独身を通す羽目に陥ったのも、引き際なんかにこだわってきたからである。
 本作で渥美清はかなり体調が悪く、演技の合間もつらそうにしていた。それを見たリリー役の浅丘ルリ子は、これが最終作になると直感して、山田洋次監督に寅次郎とリリーを一緒にさせてほしいと申し出たという。ただ、山田監督はこの後の構想も考えていたので、願いは聞き届けられることがなかった。


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2018年04月15日

厳島神社と弥山(7)

 二時間近く歩いたろうか。山頂近くにあるのが霊火堂である。小さなお堂ではあるが、空海が焚いた護摩の火が守られている。それが事実だとすると、千二百年も燃え続けたことになる。視界が開けたので、心に少し余裕ができた。日はまだ高いが、時計を見るともう午後四時過ぎである。
 向かいにあるのが弥山本堂。現在の建物は平成になってから再建されたものだが、ここで空海は虚空蔵菩薩求聞持聡明法を修したという。『三教指帰(さんごうしいき)』によれば、若い頃に土佐の室戸岬で修行し、「谷響きを惜しまず、明星来影(らいえい)す」という言葉が示すように、仏果は得ていたはずだが。記憶力が増進して、一度目にした物は忘れなくなる。膨大な経典を暗誦するのが目的だという。
 三鬼堂では三鬼大権現を祀っている。天狗を従えた護法の鬼神である。山伏によって修験道の修法が行われている。厳島神社からは五重塔以外の仏教色を除かれてしまったが、弥山には古代からの神仏習合の信仰が息づいているというわけだ。(つづく)


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