2018年03月16日

ぼくがダライラマ?(41)

 ぼくが驚いたのは、自分の素性が調べ上げられていること、チベットでは軽視されている古派の密教が、ポタラ宮の裏手の神殿で、絵画の形で密かに伝えられてきたということだった。これを描かせたのは、正式に口伝を授かった者が、ポタラ宮の中にいたということだ。また、それは一般に知られてはいけないことであるため、池に囲まれた神殿の内壁に描かれていたということだ。
「猊下がダライラマに選ばれた意味がお分かりですか」
 摂政がなぜぼくをここに連れてきたか、何となく分かった気がした。ダライラマとして生きることに抵抗しているぼくに、納得させようとしているのだ。隠されていなければいけない秘密を、ぼくと分かち合うことで、共犯の意識を植え付けようとしているのだ。
 壁にはヨーガを行う上での種々の体位や印の結び方、その際に観想すべき仏の姿まで示されていた。自らの分身を現出させたり、頭頂から体外へ抜け出したり、死者をよみがえらせたりする秘法までが、惜しむことなく明かされていた。壁画は宝石を砕いた顔料で描かれていたので、灯を近づけるとその部分だけが浮かび上がり、目を閉じても鮮やかな色が瞼に浮かび上がるのだった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 00:47| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする