2018年03月15日

男はつらいよ 寅次郎の休日(第43作)

 冒頭の寅次郎の夢が復活した。寅次郎が公家となって月見をしていると、そこに旅の女性(にょしょう)が訪ねてくる。もう分かっただろう? 女の名は桜式部という。生き別れていた兄と妹の再会というお決まりのパターンではあるが、常連にとっては楽しみの一つである。
 今回は「ぼくの伯父さん」の続きで、実質的な主人公は、甥の満男に移っている。満男の後輩泉が、別居中の父親を訪ねて東京にやって来る。名古屋で母親と暮らしていたのだが、浮気の相手と別れて家族の許に戻ってきてほしいと、父親に告げるためだった。ところが、父親は大分の日田に引っ越していた。名古屋に戻るはずの泉は日田に行くと言い出し、東京駅に見送りに来た満男も、心配で新幹線に乗ってしまう。
 ところが、日田のうちを訪ねると、父親は薬剤師の女と幸せそうに暮らしていた。別れて母親の所に戻ってほしいと、泉は言い出せず、衝動的に立ち去ってしまう。途方に暮れていた満男と泉は、寅次郎と泉の母親礼子とぱったり出会う。寅次郎と礼子は、若い二人の身を案じて、日田にやって来たのだった。そのまま温泉旅館に行き、四人は家族のような一夜を過ごす。寅次郎は水商売という職業柄、色っぽい泉の母親に心を動かされてしまう。ここに至ってようやく、寅次郎らしさが出てくるのだが……。
 満男は大学生になっているが、精神的に自立したくて、母親のさくらの世話を煙たがっている。思わず反抗的な態度を取って、父親の博と衝突している。思い返せば、僕にもそういう時期があった。あれこれと指示する母親に、ロボット扱いするなと毒づいたことも。家族と旅行するのなんか、真っ平ごめんと思ったりした。
 すでに新幹線が博多まで開業していたが、寝台特急のブルートレインは健在だった。寅次郎と泉の母親礼子が、ビールを飲みながら語らう場面が出てきたが、のんびり夜行で旅する間に、人生について考えたり語り合ったりできたのも、夜通しの移動の時間があったからである。飛行機の方が速くて割安な昨今だが、いきなり現地に着陸するのでは、旅情も何もあったもんじゃない。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 12:47| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする