2018年03月10日

ぼくがダライラマ?(39)

 春の柔らかな日射しが水面を照らし、眠りを誘う空気が辺りに漂っていた。岸辺を縁取る柳の緑が、目にまぶしく映るほどだった。大空の青い色彩もかすみ、背後にそびえるポタラ宮の白い壁も、いかめしさが和らいで見えた。
 この池にまつわる伝説を、摂政の口から聞かされても、頭の中は謎の女のことでいっぱいだった。あれから何度か夕暮れに訪れたものの、再び姿を現すことはなかった。摂政の娘かどうかも分からず、呼び出す当てもなかった。それよりも、なぜここに連れてきたかということが気にかかった。侍従に目配せしたのだが、摂政を恐れて首を振るばかりだった。
「猊下にお目にかけたい物があるのです」
 池の縁に進むと、金色の龍の船首を持つ朱塗りの船が目に入った。摂政とぼく、侍従が乗り込むと、船頭は艫綱(ともづな)を解いて水面に船を滑らせた。龍王を祀る小さな神殿は、中央にある人工の島に建てられている。そこへは船で渡るしかなく、向こう岸に着いても、船頭は上陸を許されなかった。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 00:00| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする