2018年03月06日

工藤裕之の『追憶の鉄路』(2)

 国鉄分割民営化は、赤字路線の廃止と、労働組合潰しが目的だったようだ。北海道の路線の三分の二が廃止された結果を見れば、過疎地域が大半の北海道を、JR北海道だけで維持するのは無理だったのだ。線路を補修する費用もままならず、脱線事故が続いたり、豪雨による橋脚や路肩の流出で根室本線と日高本線の一部が、復旧を見込めぬまま廃止されることになったのも、分割民営化が誤りだったことを示しているのではないか。
 海外では採算を無視しても、住民の足である地方路線が維持されたり、記念鉄道として廃止路線を復活させたりしている。日本でも廃止された美幸線の一部にトロッコを走らせるなどして、観光資源として活用していく動きがある。湧網線の廃線跡はサイクリングロードとなっていた。ただ目に映る景色は同じでも、線路をトコトコ走るディーゼルカーから得た印象とは異なる。それは何だろうか。
 工藤裕之の『追憶の鉄路』を手に取って分かったのは、鉄道を維持する駅員や地域住民と、通りすがりの旅人との心の触れ合いがあったということだ。昭和時代の人情が、廃止された路線には残っていたのである。旅人を駅長室に入れたり、子供を車両に乗せてやるなどは、現在のような杓子定規の社会では考えられない。相手を喜ばせてあげたい、ただそれだけの思いで、実害のないルール違反が行われていたわけだ。サービスしてもらった方も、それを吹聴しないという礼儀は知っていた。
 赤字路線の切り捨てとともに、昭和時代に残っていた人間味のある曖昧さ、非効率性、いい加減さが葬り去られてしまった。線路に糞便をまき散らしたり、便所が卒倒するほど臭かったり、ホーム下が吸い殻のゴミ捨て場だったりしたが、僕は若かった頃、昭和時代の混沌とした日本の方が好きだ。今でも悔やまれるのは、一掃されてしまった赤字路線の多くに乗れなかったということ。そうした鉄道マニアにとって、工藤裕之の『追憶の鉄路』は、かなわなかった北海道の赤字路線の旅を、空想のうちにかなえさせてくれる写真集である。

参考文献
工藤裕之『追憶の鉄路』(北海道新聞社)

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