2018年03月18日

男はつらいよ 寅次郎の告白(第44作)

 このシリーズは車寅次郎の旅と女、恋がテーマだったが、渥美清の体調不良で、寅次郎の出演場面を減らさざるを得ず、甥の満男とガールフレンド泉の恋物語を、主たるテーマに据えることになった。そのために、連作の形で各回のエピソードが緩い形で結ばれていたのが、連続ドラマに近い形を取ることになった。
 そのため、毎回必ず見る観客を相手にするしかなくなった。それならば、次作を制作しないという選択肢もあったかもしれない。各回だけ見ても面白いようにするには、単独で分かる内容にしなければならない。物語の展開が満男中心になったからといって、満男の恋人を毎回代えるわけにもいかない。とにかく次作を見たいというファンの要請と、それでは新たな観客を呼びこめないというジレンマに陥っているというわけだ。
 今回は満男と泉の恋物語第三弾である。泉の母親礼子に恋人ができて、反発した泉が家出し、鳥取砂丘を見て「寂しい海が私の寂しさを吸い取ってくれるようです」という葉書を送ってよこす。心配した満男があわてて鳥取に向かう。再会できた二人は、寅次郎に連れられて、馴染みの料理屋に連れていかれる。そこは昔、寅次郎が恋した女、聖子の店だった。
 恋敵だった板前が死んで、未亡人となった聖子に迫られたというのだが、これはこのシリーズのファンにも初耳である。寅次郎はすぐ手に入る女性が近づいてくると、自分の方から逃げ出してしまう。高嶺の花には夢中になるのはどうしてか。満男は泉に対して寅次郎の恋愛観を解き明かす。ただ、今さら聞かされるまでもない話で、シリーズを続けるには寅次郎に所帯を持たせるわけにはいかないのである。


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2018年03月16日

ぼくがダライラマ?(41)

 ぼくが驚いたのは、自分の素性が調べ上げられていること、チベットでは軽視されている古派の密教が、ポタラ宮の裏手の神殿で、絵画の形で密かに伝えられてきたということだった。これを描かせたのは、正式に口伝を授かった者が、ポタラ宮の中にいたということだ。また、それは一般に知られてはいけないことであるため、池に囲まれた神殿の内壁に描かれていたということだ。
「猊下がダライラマに選ばれた意味がお分かりですか」
 摂政がなぜぼくをここに連れてきたか、何となく分かった気がした。ダライラマとして生きることに抵抗しているぼくに、納得させようとしているのだ。隠されていなければいけない秘密を、ぼくと分かち合うことで、共犯の意識を植え付けようとしているのだ。
 壁にはヨーガを行う上での種々の体位や印の結び方、その際に観想すべき仏の姿まで示されていた。自らの分身を現出させたり、頭頂から体外へ抜け出したり、死者をよみがえらせたりする秘法までが、惜しむことなく明かされていた。壁画は宝石を砕いた顔料で描かれていたので、灯を近づけるとその部分だけが浮かび上がり、目を閉じても鮮やかな色が瞼に浮かび上がるのだった。(つづく)


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2018年03月15日

男はつらいよ 寅次郎の休日(第43作)

 冒頭の寅次郎の夢が復活した。寅次郎が公家となって月見をしていると、そこに旅の女性(にょしょう)が訪ねてくる。もう分かっただろう? 女の名は桜式部という。生き別れていた兄と妹の再会というお決まりのパターンではあるが、常連にとっては楽しみの一つである。
 今回は「ぼくの伯父さん」の続きで、実質的な主人公は、甥の満男に移っている。満男の後輩泉が、別居中の父親を訪ねて東京にやって来る。名古屋で母親と暮らしていたのだが、浮気の相手と別れて家族の許に戻ってきてほしいと、父親に告げるためだった。ところが、父親は大分の日田に引っ越していた。名古屋に戻るはずの泉は日田に行くと言い出し、東京駅に見送りに来た満男も、心配で新幹線に乗ってしまう。
 ところが、日田のうちを訪ねると、父親は薬剤師の女と幸せそうに暮らしていた。別れて母親の所に戻ってほしいと、泉は言い出せず、衝動的に立ち去ってしまう。途方に暮れていた満男と泉は、寅次郎と泉の母親礼子とぱったり出会う。寅次郎と礼子は、若い二人の身を案じて、日田にやって来たのだった。そのまま温泉旅館に行き、四人は家族のような一夜を過ごす。寅次郎は水商売という職業柄、色っぽい泉の母親に心を動かされてしまう。ここに至ってようやく、寅次郎らしさが出てくるのだが……。
 満男は大学生になっているが、精神的に自立したくて、母親のさくらの世話を煙たがっている。思わず反抗的な態度を取って、父親の博と衝突している。思い返せば、僕にもそういう時期があった。あれこれと指示する母親に、ロボット扱いするなと毒づいたことも。家族と旅行するのなんか、真っ平ごめんと思ったりした。
 すでに新幹線が博多まで開業していたが、寝台特急のブルートレインは健在だった。寅次郎と泉の母親礼子が、ビールを飲みながら語らう場面が出てきたが、のんびり夜行で旅する間に、人生について考えたり語り合ったりできたのも、夜通しの移動の時間があったからである。飛行機の方が速くて割安な昨今だが、いきなり現地に着陸するのでは、旅情も何もあったもんじゃない。


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