駐車場に車を止めた。硫黄山や屈斜路湖が遠方に見渡せる。ここからの眺めも素晴らしいのだが、木の階段を登っていくと、摩周湖が姿を現した。湖面ははるか下方にある。崖の上から見下ろすといった感じである。これで三度目なのだが、今回も雲一つ、霞もかかっていない。水深が深く、流れ込む川も流れ出す川もないため、水面はほとんど波立たず、空の青をより深くした摩周ブルーである。絶壁に近い火口に、しがみつくように高原植物や、白樺などが生えている。対岸に見える急峻な山が摩周岳、アイヌ語ではカムイヌプリ、神の山という意味である。大きく口を開けた火口は、ここからはわずかしか見えないが、茶色い無気味な喉のようである。
これほど深い青をたたえる湖は、日本にはほかにない。内側を覆う草木と、無機質なカムイヌプリのコントラスト、中央に浮かぶ小島、カムイッシュは緑で覆われているが、湖底からそびえる火山の頂である。この組み合わせが、摩周湖のブルーをさらに際立たせているのだ。(つづく)
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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