硫黄山の駐車場に友人は車を止めた。僕はこれで三度目になる。初めて来たのは、二十一歳の時だった。サークルの仲間に教えられて、移動車で販売していたソフトクリームを食べた。二度目は三十三歳の時で、開業したレストランで売っていた。今回もまた、乳脂肪分たっぷりのソフトクリームを食べた。
レストランの裏側では、崩れかけた山体のあちこちから、硫化水素が噴き出している。卵の腐った匂いが漂っている。噴き出すガスで、ところどころ霞がかかっている。平野の真ん中に、何でこんな荒涼とした山が、と思ってしまいそうだが、ここはカルデラの内側である。火口の底を歩いているというわけだ。地下深くには遠い未来に巨大噴火を起こすマグマが、今も眠っているのだ。辺りに響く轟音は、魔物のいびきを聞いているようなものだ。(つづく)
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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