2018年02月12日

男はつらいよ 寅次郎物語(第39作)

 とらやに秀吉という少年が尋ねてくる。父親はテキ屋で、自分が死んだら寅次郎を頼るようにと言い残した。「飲む、打つ、買う」のヤクザ者で、怒り出すと女房の髪の毛をつかんで引きずり回す。それに耐えかねて、秀吉の母ふでは蒸発していた。
 寅次郎は少年を連れて、母ふでを捜す旅に出る。和歌山にはすでにおらず、吉野の宿に泊まったところで、少年は高熱を出す。隣室にいた隆子は親身になって看病してくれる。隆子は寅次郎のことを父親だと思って「お父さん」と呼ぶと、寅次郎は隆子のことを「母さん」と呼ぶ。
 少年の熱は下がり、寅次郎は少年と隆子を連れて、金峯山寺に参拝する。人目にはまるで家族のようである。擬似的な夫婦、親子に見える。寅次郎は隆子と少年三人で暮らす家庭を夢見る。寅次郎と隆子は心を通じるようになるが、これはあくまでも少年が結びつけたもので、本当は寅次郎の子ですらない。それを寅次郎も隆子も知っており、後ろ髪を引かれながらもきっぱりと別れる。
 今回の物語は、母親ふでを捜す旅の途中で、袖すり合うも多生の縁みたいな、心温まるエピソードが展開するところに特徴がある。他人の子供なのに、なぜ隆子が親身となったか、それは隆子が子供を堕ろしていたからという種明かしがされる。少年とふでが志摩で再会する場面では、すでに物語のピークは過ぎており、寅次郎は別れを惜しむことなく柴又に戻る。
 隆子を演じたのは秋吉久美子である。僕が初めて知ったのは、NHKの大河ドラマ『花神』においてだった。高杉晋作の妾おうのを演じていた。「うち、あほやさかい」と酔って乱れた感じが、妙に艶っぽかったのを覚えている。その記憶があるから、母性本能を見せた今回の演技が新鮮に思われた。(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:05| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする