2018年02月22日

時を止める湖面(6)

 でも、来てみたら良かった。大きな湖であるだけに、懐の深さが感じられる。半島の西側は砂浜が広がり、キャンプ場も設けられ、打ち寄せるさざ波に、夏の日射しが戯れている。子供たちが水辺に駆け寄る。カップルが並んで写真を撮る。女性的な優しさが広がっている。
 半島と言っても、付け根の部分は数十メートルしかない。半島の中央にはかつての小火山、和琴山がそびえ、辺りは深い森となっている。湖岸に近い所には露天風呂もあって、海水パンツをはいた若者が入っている。湯の温度は四十度以上あり、結構熱く感じられる。
 半島を横切る形で東側に出ると、湖の様子は一変する。摩周湖ほどではないが、深く青い色をして、湖岸にしぶきを上げる湖水は、たぷたぷ音を立てている。深い音はそれだけ多くの水をたたえ、水底が知れぬことを意味している。おおらかでありながら、大きな力をはらんでいるのを見せつけられた。いかにも男性的な力を誇示している。和琴半島を境にして、これほど異なる様相を見せる屈斜路湖は、大きさに見合うだけの包容力もあるのだ。

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2018年02月21日

男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日(第40作)

 信州小諸を旅した寅次郎は、人なつっこい老婆と親しくなり、一晩泊めてもらうことになる。翌朝、女医の真知子がやってきて、老婆を入院させようとする。老婆はこの家で死にたいと言うが、寅次郎に説得されて入院する。
 女医の真知子は、山好きの夫を遭難で失い、息子を東京の母に預けて、一人暮らしをしていた。そこに姪の由紀がやって来る。由紀は早稲田大学に通う学生で、寅次郎と真知子を結びつけたいと思っている。
 柴又に戻った寅次郎は、由紀が通う早稲田大学の授業に出て、勝手な演説をぶちはじめる。学生の爆笑で講義は台無しになってしまう。今とは違って、部外者が警備員につまみ出されることもなかった。教師も学生もゆったりしていて、自由な空気があの頃にはあった。
 今回のタイトルは、俵万智の短歌集『サラダ記念日』にちなんでいる。どうやら、由紀を俵万智になぞらえているらしい。ただ、寅次郎の恋物語としては、今一つ物足りない。女医の真知子とのからみが弱い気がする。互いに好意を抱いている程度である。
 大きな変更点としては、さくらが団子屋を切り回すようになり、店の名前も「くるまや」に変わっている。モデルとなった団子屋が「とらや」となったので、山田洋次監督が不快感を示して変更したらしい。
 僕にとっては、真知子や由紀よりも、最初に登場した老婆の方が味があって良かった。鈴木光枝はいかにも、おばあちゃんといった感じで、いつまで経っても若作りの老女が多い今の時代には、とても懐かしい気がした。
 あと、ドラマの中で寅次郎が甥の満男に対し、由紀が通う早稲田大学を受験しろと言っている場面を見て、今は亡き父が、僕の従兄と結婚した早稲田の女学生に「どうしたら早稲田大学に入れるか、よく話を聞いておけ」と言ったのを思い出した。


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2018年02月20日

時を止める湖面(5)

 第一展望台に移った。坂道をかなり下ったので、さわやかな空気ではなく、少々暑くなった。標高が低くなったばかりでなく、売店には観光客があふれているから、騒がしくて湖面に漂う雰囲気が感じられない。カムイヌプリやカムイッシュを真横から見ることになるため、構図としても面白くない。第三展望台に売店が作られかったのは、偶然ではなく神の采配である。
 このまま弟子屈で出てしまうのかと思ったら、友人は屈斜路湖も見たいと言い出した。「ただ、大きいだけの湖だよ」と僕は答えた。美幌峠からの眺めなら見たいが、車はどんどん下ると、東の方にハンドルを切った。ナビを検索しながら進むと、和琴半島が出てきた。
 和琴半島にはかつて来たことがある。三十三歳のとき、今から二十年余り前のことである。屈斜路湖のユースホステルに泊まり、釧路川でカヌー体験したあと、サイクリングでここに立ち寄り、腰掛けてボート遊びする人を眺めながら、旅日記をつけていたのだった。(つづく)


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