2018年01月26日

知床は記憶の果てに(9)

 一湖のみなら、半分程度の時間で歩けるのだが。それでも、五湖全部回りたかった。僕は諦めるというのが好きではない。これほど晴れ上がった天気に、知床で巡り会ったこともなかったし。急いで写真や動画を撮って、一周しようということになった。熊を避けるために大声で話しながら。
 屋外に出た。見上げると、上空は青く澄み渡って、雲はわずかしか見えない。かつて二度訪れたわけだが、いずれも山は雲に隠れ、湖水も木々の緑を映すばかりでよどんでいた。絵葉書で目にする風景など、作り物じゃないかと思っていたのだが。五湖の前に立つと……、あまりの美しさに声を失った。
 水面に映った知床連山は、鏡を見るようにくっきり浮かび上がっていた。湖岸の樹木も枝から葉の一枚まで映えている。雪のない季節だが、ちょうど連山の上にかかった白い雲が雪のようで、色彩から見ても完璧な美しさだった。青い湖水に映った像は、本物の空よりも青く、木々の輪郭を際立たせていた。しかも、ほとんど沈黙の世界。カラスさえも周りに配慮して、大人しく羽を休めていた。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:17| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする