2018年01月16日

知床は記憶の果てに(5)

 コンビニでお握りを買い、車内で食べた後、知床自然センターの駐車場まで行くことになった。友人の話では、カムイワッカの滝までの乗車券は、そこで買うことになるからということだった。行く手の道を見ると、ものすごい急坂が続いている。二十八歳の時、知床五湖まで自転車で行ったことを話すと、友人は信じられないという顔をした。若かったから、平気で無茶をやったのだった。たしかに、ウトロからの上り坂は、登山道にしか見えなかったから。
 知床自然センターで駐車した。そこからはシャトルバスに乗り換えることになる。その前にコケモモのソフトクリームを食べようと、友人を誘った。以前、知床五湖で口にしたのを思い出したからだ。血のような色をしていて、ハスカップよりも酸味があり、さわやかな香りがする。ちなみに、ハスカップで作る「よいとまけ」というお菓子は、苫小牧の名産である。
 どうしようか迷ったが、最初にカムイワッカ湯の滝まで、バスで行ってしまうことにした。時間が押していたし、席がすいていたので。発車した途端、アナウンスが入った。カムイワッカの滝は四段になっているが、落石のために一ノ滝までしか行けないというのだ。
 青天の霹靂という奴だった。湯の川を四ノ滝まで登って、滝壺にたまった温泉に浸かる醍醐味は、もはや味わえないというのか。三十三歳の時、文学青年に誘われて、四ノ滝まで登ったときのことを思い出した。滑りやすく傾斜のきつい川底は、裸足では危険だし、サンダルでは脱げてしまう。上に行くほど水温は上がっていき、滝を越えるときにはほとんど四つん這いだった……。
 滝登りのワイルド感や、湯に浸かる人々の交歓も、過去のものとなってしまったわけか。カムイワッカの滝の魅力がなくなってしまった。一ノ滝までだったら、奥多摩あたりの滝と大して変わらない。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:46| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする