2018年01月10日

男はつらいよ 寅次郎真実一路(第34作)

 金がないのに居酒屋で飲んでしまった寅次郎は、たまたま居合わせた証券会社の課長健吉に、酒代をおごってもらう。米倉斉加年は以前、柴又の警官として登場したはずだが、今回はモーレツ社員の役である。午前様になっても、翌日は6時に家を出る。酒を飲んだからといって、決して遅刻してはならない。
 家族のために、自然の残る茨城県の牛久沼に家を建てたのだろう。農村の雰囲気が漂う風景と、新興住宅地が隣り合わせている。長期離通勤は「痛勤」という造語を生んだ。バブル経済がはじける前、昇る日は沈まないと思われた日本経済華やかなりし頃、仕事のためなら、家族とほとんど話ができなくても当たり前、海外から「エコノミック・アニマル」と揶揄されながらも、必死に働くことが美徳とされていた時代である。
 酒をおごってもらった礼に、健吉の会社に現れた寅次郎は、夜九時まで待合室で待たされ、ソファーで居眠りしている。ようやく仕事の終わった健吉と寅次郎は居酒屋に行き、泥酔して牛久沼の自宅に向かう。翌朝、寝坊した寅次郎は、健吉の妻ふじ子と顔を合わせ、美しさに見とれながらも、人妻であることを考え、あわてて朝食もとらずに出て行く。
 仕事に疲れ果てた健吉が、行方不明になった知らせを受けた寅次郎は、ふじ子とともに健吉の故郷鹿児島に向かう。開聞岳が見える辺りで、生死不明の健吉が愛した地を、順に巡っていくのである。しかし、健吉の消息はつかめず、このまま健吉が現れなければという妄想を抱いた寅次郎は、自身の醜さに煩悶する。そのまま旅に出ようとしたところに、ようやく健吉が現れ、牛久沼のふじ子のもとにタクシーで届けるのである。
 ふじ子を演じたのは、大原麗子である。大原はNHKの大河ドラマによく出演していた。『春日局』で主人公のおふくを好演した。僕がよく記憶しているのは、『徳川慶喜』で新門辰五郎の妻れんと、ナレーションを担当したことで、粋な女性の江戸弁による語り口が耳に残っている。そう言えば、ずいぶんテレビで見ていないなと思ったら、2009年に亡くなっていた。自宅で死亡しているのが発見されたという。脳内出血だったらしいが、寂しい最期となった。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
http://itunes.apple.com/jp/podcast/qing-kong-wen-ku-no-zuo-jia/id504177440?l=en

Twitter
https://twitter.com/lebleudeciel38

ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ





ランキングはこちらをクリック!

posted by 高野敦志 at 01:10| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする