2018年01月04日

サロマ湖は変われど(7)

 空には月はなかった。月を見て、地球と見紛うこともなかった。あの日よりも温暖だし、海も緑がかっていない。横には友人もいて、孤独でもない。ただ記憶の中では、かつての自分が生きていた。
 そのとき、砂浜に不思議な物を見つけた。もちろん、幻覚ではない。枝を円錐状に支え合わせて、テントの骨のように組んであった。燃え上がる炎を、イメージしているのだろうか。動きを止めた火は、海岸に作られたオブジェに見える。作った人間はいなくても、意思が形を取った存在だった。
 時間に余裕があるので、T字路の箇所を越えて走っていく。そのとき、かつての記憶がつぶさによみがえった。ああ、この風景だ。あの日より晴れているが、日も西に傾いているが、確かにこの風景だ。坂道を下っていく。かつてはここを反対に上って、初めてオホーツク海を目にしたのだった。そこには緑がかった、冷たい北の海があった……。
 もう戻らなければならない。日が傾いた中を、必死に自転車をこいでいく。ネイチャーセンターに着いたのは、五時半少し過ぎだった。車に乗り込むと、僕は一方的にしゃべり続けた。友人は圧倒されている様子だった。過去と現在を照合する独り言に。


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:24| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする