2017年12月07日

ぼくがダライラマ?(32)

 式典がようやく終わり、白宮の中で休んでいると、またもや摂政が姿を現した。自分の時間はいつになったら持てるのだろう。椅子に座ったまま、ため息をついていると、摂政はうやうやしくひざまずいた。ぼくが立ち上がると、摂政は侍従に対して、ランプを持ってくるように命じた。
「ポタラ宮の中をご案内にいたしますので」
 この巨大な宮殿を見て回るだけでも、数日はかかりそうだった。部屋の数はいくつあるのか。この建物の完成のために、母さんとぼくはあの僧院に幽閉されていたのだ!
 ランプを持った侍従が先導する形で、ぼくは摂政とともに紅宮の階段を上っていった。一体何階まで連れていくつもりか。外はまだ明るいはずなのに、入り込んだ部屋は真夜中のように薄暗かった。
 バターの灯に照らされた広大な広間には、チベットに仏教を広めたパドマサンバヴァや、ゲルク派の宗祖ツォンカパの巨大な金像が飾られていた。光背には龍神や翼を生やした迦楼羅(かるら)が舞い、黄金の台座にはルビーやヒスイ、トルコ石などがはめ込まれている。
「ポタラ宮の構想は、先のダライラマ五世が、観音菩薩のお住まいである宮殿を、この世に出現させることでした……」
 摂政の説明を聞きながら、広い部屋の中には、二体の祖師と脇侍(わきじ)の他は、ほとんど祀られていないことに気づいた。バターの灯が揺らめく中、柱や壁を彩る黄金の細工は、身をくねらせるように光を放った。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:10| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする