2017年12月16日

サロマ湖は変われど(3)

 能取湖が見える。遠浅の岸辺はなだらかなカーブを描いている。サンゴソウはまだ赤らんでいなかったが。記憶がよみがえってきた。二十一歳大学三年だった僕は、初めての北海道旅行で、網走から湧網線のディーゼルカーに乗って、今目にしている風景を見たのだった。紅に染まったサンゴソウ。聞いていた通りだ……。思い出したというだけではない。かつて目を見張った時の感動まで、よみがえってきたのだ。青年だった頃の自分が、心の中にまだ生きていた。
 時計を見ると、午後二時過ぎである。湖岸にある食堂に入ると、広い店をお婆さんが一人で切り盛りしていた。地元の人が懇親会を開いていた。僕と友人は、帆立貝入りのカレーを食べた。店の壁には、湖岸を走っていた湧網線の蒸気機関車とディーゼルカーの写真が飾ってあった。かつての線路跡は、今ではサイクリングロードとなっている。車窓で眺めたのと同じ風景を、ペダルを踏みながら楽しめるわけである。
 オホーツク海が近づいてきた。常呂川を渡っている。海側にはかつて湧網線が走っていたはずだ。恐らく坂の上辺りに常呂駅があったのだろう。人気のないさびれた無人駅で、低いホームに人影が現れるのは、ディーゼルカーがゆっくり入線してくるときぐらい。廃止された現在の方が、よほど開発が進んでいる。あの孤独なランナーの休息所が、バスターミナルに姿を変えてしまったとは信じたくない。(つづく)

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2017年12月15日

サロマ湖は変われど(2)

 オンネトーをあとにした。今回の北海道旅行は、大学生の頃に訪れた土地を、五十過ぎとなって再訪しようというもので、サロマ湖は二十一の時から目にしていない。一体どんな感慨を抱くだろうか。
 目的地はサロマ湖畔のワッカ原生花園。サロマ湖とオホーツク海を仕切る砂州にある。カーナビで検索すると、午後四時過ぎに到着と出た。ただし、実際にはそんなに時間はかからないだろう。道がすいているし、ほとんど信号がないからだ。
 しばらく進んでいくと、道の駅が見えてきた。かつての北見相生駅である。国鉄が分割民営化されて以来、北海道の鉄道は三分の二が廃止されてしまったが、僕らが学生の頃には、まだ鉄道網が存続していたのだ。そこは石北本線の美幌駅から延びていた相生線の終着駅だった。今はレールと車両を残す鉄道公園に変わっていた。客車はライダーハウスとなっており、一般の入場はお断りとあった。(つづく)

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2017年12月14日

サロマ湖は変われど(1)

 翌朝は雲が多かった。阿寒湖はろくに見ていないのに、友人の望むままにオンネトーに向かっていた。アイヌ語で「大きい沼」を意味するのだという。何だか聞いたことある地名だと思ったが、オンネトーは根室半島の付け根に同名の塩水湖もあり、温根沼という漢字が当てられている。
 今回向かったのは、足寄町にあるオンネトーで、時間によって水面の色が変わることから「五色沼」とも呼ばれる。ただし、「五色沼」は裏磐梯にもあるから、地名の重複を避けるのは容易ではない。雌阿寒岳の噴火による堰止湖で、サンショウウオやザリガニが生息している淡水湖である。
 オンネトーの水は緑がかっていた。これは雲が多いからだろうか。雲が切れるにつれて、岸辺の葦が照り映えてきた。ただ、雌阿寒岳は雲がかかり、山頂が見え隠れしている。ふたたび車に乗り込むと、岸に沿って進んでいく。南の端には国設野営場、キャンプ場があった。
 その辺りは水深が浅く、水底は土の色を映して、茶色から黄色、緑色へとグラデーションを作っている。セミが鳴いているのだが、本土のものと比べると妙に甲高い。エゾゼミというらしい。(つづく)

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