2017年11月25日

宮本研編『ドラマの書き方』(2)

「『東海道四谷怪談』の方法」という副題がついた広末保の文章も印象的だった。その結論の部分を引用してみよう。
「倫理的な善悪を超越したとき、はじめて悪のエネルギーは顕在化されるが、そのためには、弱者はつねに善であるといった基準をナンセンス化する旺盛な喜劇精神を必要としたはずである」
 これは殺された者が怨霊と化すことで、残酷な復讐をなす内容をさしており、そこには素朴な写実主義からすれば、笑うしかないような作者のユーモアが隠されているというのである。
 椎名麟三の「演劇と小説」は、見過ごされがちな両ジャンルの違いを、的確に指摘してくれている。演劇の最大の特徴は次の点にある。舞台で表現されているのはすべて現在で、そこには目に見える空間があり、観衆への働きかけも容易であるということである。
 それに対して、小説は回想といった形を取ることが多く、表現されている内容も、過去の思い出や将来への希望など、いずれも現前しないものが多い。想像力に訴えるという面では、小説は読者に多くの努力を強いるが、それだけ大きな自由を与えることでもある。
 文学作品を舞台化する際には、こうした根本的な視点の変更が不可避なため、舞台芸術として完成させるには、作品を根本から再構成する必要も出てくる。舞台化された作品が原作に忠実な余り見劣りがしたり、平凡な小説が名監督の手で傑作に変身するのも、今述べたことと無縁ではないかもしれない。

参考文献
宮本研編『ドラマの書き方』(明治書院)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:15| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする