2017年11月12日

ぼくがダライラマ?(28)

 眠くなって、ベッドに腰掛けていた時だった。遠くから靴音が近づいてきた。誰が来たのか察しはついた。灯火が揺れている。扉の開く音がした。ぼくは立ち上がった。侍従に従われてきた摂政は、わざとらしい笑みを浮かべながら、目だけは射貫くような鋭さを持っている。
「慣れぬことばかりで、当惑されていることでしょう。しかし、慣れていただくしかない」
「たとえ、自分がダライラマであると、信じられなくても、ですか」
「信じるかどうかの問題ではないのです。猊下が仏道修行にいそしまれれば、自ずと風格が現れてきます。その姿を臣下にお見せになれば、下々の者どもは観音菩薩の化身として猊下にぬかずきます」
 ぼくは部屋から出て行こうとした。摂政は行く手を阻むように、戸口の前で立ちはだかった。二人の体が触れた。学者上がりの権力者だと聞いていたが、僧兵のような肉体をしている。
「しばらくはこの宮殿の外から出ることを、禁止させていただきます。ポタラ宮が完成するまでは」
「ぼくはただの人形じゃない。血が通った゜人間なんだ。故郷の村から連れ出して、十年以上も幽閉しておいて、今度はまた……」(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 04:56| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする