2017年10月27日

ぼくがダライラマ?(25)

 手前に立っている僧形の男は、こちらに向かって合掌したが、鋭い目つきで心を探るように、ぼくの全身を眺め渡した。剃り上げた頭はてらてらとし、太い眉と手入れされた口ひげには、すでに白い物が混じっていた。ぼくは瞬間に、この男がチベットの政治を動かしているのだと分かった。摂政のサンゲ・ギャツォだった。
 摂政は長々とした演説を始めた。先のダライラマ五世は、十五年前にお隠れになっていたが、ポタラ宮の竣工までは秘すようにと遺言されたということ、清の康熙帝やモンゴル王のラサン・ハンが、ダライラマの空位を知れば、必ずやチベットに攻め入ったであろうということが述べられた
 話を聞きながら、ぼくはようやく、自分がどうして幼い頃に故郷の村から連れ出され、長年にわたって僧院に幽閉されていたかを知った。ダライラマ五世の遺言だったいうが、神下ろしか何かでぼくを六世に選び、国の都合でお母さんとぼくを、お父さんから引き離して、あんな山奥の僧院に閉じ込めていたのだ。ぼくは怒りを押さえようとして、自分が青ざめていくのを感じた。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:34| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする