2017年10月03日

男はつらいよ 寅次郎と殿様(第19作)

 このシリーズの冒頭は、寅次郎の夢で始まる。映画制作に関わったスタッフが、毎度趣向を凝らした小劇を披露する。それを見ていて、「紅白歌合戦」に出演する歌手が演じる劇を思い出した。ストーリーがどうかと言うより、誰がどの役を演じているかに、観客の関心が向いているからである。
 今回、寅次郎は「鞍馬天狗」を演じている。この夢は本筋と関わりがある。寅次郎が伊予大洲で出会う旧大洲藩の殿様は、嵐寛寿郎が演じている。映画『鞍馬天狗』の俳優であり、サムライの言葉遣いをさせるには、持って来いの配役となっている。
 末の息子の結婚に反対し、勘当した息子の亡き後、ぜひ息子の嫁に会って礼を言いたいという殿様の願いを、安請け合いした寅次郎が、息子の嫁鞠子を探して奔走するという話である。
 華族制度がなくなっても、元の殿様が在世していた昭和の後期、家柄や身分の違いを気にする日本人が多かった。その一方で、相手の気持ちを察することが美徳とされ、人の話を聞いたり、ドラマを見たりしてもらい泣きする人も多かった。他人に対する思いやりが残っていて、無関心と冷血さが横行する現代と比べたら、別の国のドラマでも見ている気分になる。
 殿様は嫁の鞠子に、大洲に来て自分と一緒に暮らしてほしいと願う。しかも、寅次郎と再婚してほしいとまで思う。殿様の勝手な願望が、鞠子の気持ちとは無関係に、とらやの人たちの心を揺さぶる。現代だったら、老人の妄想だとして、ハナから無視されるだけなのに。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 04:25| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする