2017年09月11日

男はつらいよ 寅次郎相合い傘(第15作)

『寅次郎忘れな草』のヒロイン、リリーの再登場である。リリーは寿司屋の亭主と別れて、以前と同じように、酒場で歌をうたって生活している。寅さんの女版のような性格だから、堅気な生活には向いていないのである。
 寅次郎は青森で兵藤という男と旅をしている。この男は自由を求めて家出してきたのだった。そこに偶然、リリーが現れて、三人は世間のしがらみから逃れた生活を送る。駅舎で夜を過ごしたりは、若者でなければなかなかできない。
 日本がまだ希望に満ちていた頃、モラトリアムという言葉が流行していた。本来は金融の用語で「支払猶予」を意味するのだが、学校を卒業して社会人となるべき若者が、しばらく就職するのを猶予してもらって、旅をしたりしながら、自分とは何か考えたりすることを指す。親の方でもそれを許せる経済的な余裕があった。
 ところが、寅次郎やリリーは、もう中年なのに定職に就かず、気ままな生活を送っている。兵藤という男も、そうした自由に憧れて家出したのだった。大人になりきれない人間なのである。ただ、寅次郎と兵藤、リリーとでは異なる点もある。男はいつまでも甘い夢を見ているが、女は夢を見ながらも、現実を厳しく見つめる目も持っている。甘ったれた男なんか見ていられない。そこで、リリーは寅次郎と衝突するのである。
 とらやの人たちは、相性が抜群のリリーと寅次郎の結婚を願い、リリーもそれを承諾する。ところが、寅次郎はリリーが冗談を言っていると思い込む。すると、勝ち気なリリーは冗談だと嘘を言って、とらやを飛び出してしまう。一箇所に留まれない渡り鳥なので、どんなに相性が良くても、二人で一緒に暮らすというのはどだい無理な話だと、寅次郎も悟っているのである。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 02:12| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする