2017年09月10日

ぼくがダライラマ?(17)

 奔放な生活を送る謎の青年の話は、たちまち周辺の村に広がった。それが観音菩薩の化身らしいと言うので、人々の好奇心に混じった不安は、尾ひれがついて高まるばかりだった。ダライラマ5世はすでにお隠れになって、生まれ変わりの6世が、ラサから離れた山中の寺でかくまわれている。そのお方は山奥で狩りをやって、俗人と何ら変わらぬ生活を送ってるらしい。そうした噂はラサの町にも伝わっていった。
 幼い頃から幽閉されていたぼくは、ようやく目に見えない壁の外に出られる日が近づいていた。それがさらに大きな壁の中に移るに過ぎないことは、まだよく分かっていなかったのだが。うねるような変化は、ラサから届いた分厚い書状によって始まった。ぼくのことを持て余していた僧院長にとっては、待ち望んでいた引き渡しの時だったろうが。
 ぼくと母のために、新しい服が仕立てられていた。下女のような暮らしを強いられていた母さんも、着古したチュパ(上着)やバンデン(前掛け)に代わって、五色の糸で花鳥を刺繍した物が贈られた。僧院長の話によれば、ほどなくぼくは、ナンカルツェという町に送られるということだった。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 11:08| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする