2017年09月06日

男はつらいよ 寅次郎子守唄(第14作)

『男はつらいよ』のシリーズで、おいちゃん車竜造は、配役が二度代わっている。初代の森川信は、寅次郎の叔父らしく、江戸っ子ならではの啖呵の切り方が堂に入っていた。気が短いところなども、血のつながりを感じさせるほどの名演技だったが、惜しくも病没して降板した。
 二代目のおいちゃんは、松村達雄だった。このおいちゃんがなぜ降板したかは、よく知られていない。僕自身、最初においちゃんとして登場したときは、スケベな藪医者役のイメージが強くて、どうかなと感じたのだが、さすがは名優、次作からはすっかり打ち解けた雰囲気になっていた。それなのにどうしてと思っていた。実は、松村自身も降板する意思はなかったという。しばらく続篇の制作はないという話を聞いて、盲腸の手術をすることにしたのに、続篇の制作が決まってしまい、やむなく代役を立てることになったらしい。その話を聞いて松村は激怒したという。
 三代目の下條正巳は、最初は固辞するつもりだったらしいが、息子の下條アトムに勧められて引き受けることにしたという。最終作まで下條がおいちゃん役を演じたため、途中から『男はつらいよ』のシリーズを見た観客にとっては、下條がおいちゃんだというイメージが定着した。おいちゃんとしての演技を見るのは、初めてではなかったためかもしれないが、頑固親父で口数が少ない、いかにも昭和時代の父親の雰囲気で、すっかり竜造役にはまっていた。
 今回の作品で目を引く点は、旅先の唐津で他人に押しつけられた赤ん坊を、おんぶ紐で背負った姿で寅次郎が現れ、「寅さんには子供がいた」という噂が柴又の町に広まってしまった点である。
 おんぶ紐というのは、格好が悪いと思われているためか、ベビーカーが流行っているためか、すっかり流行らなくなった。ただ、おんぶ紐で背負われて育つことで、子供は母親に対する絶対的な信頼を抱くとともに、母親の働く姿を物心つく前から見せられ、いろいろな人と出会うことで、社会性の基礎を身に着けるという。今は廃れてしまった日本式の育児法である。
 いま一つは、さくらの夫、博が仕事で腕にけがをした点。それが縁で看護婦の京子と知り合うことになる。寅次郎はいつものように京子に惹かれるわけだが、京子の参加しているコーラスグループのリーダー弥太郎が、京子に恋しているのを知って、告白をするように促すのである。それが実を結ぶことで、寅次郎はまたもや失恋し、柴又をあとにすることになる。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:52| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする