2017年09月15日

「んみゃーち」の宮古島(13)

 岸に上がると小雨がぱらついてきた。リュックサックを岩蔭に隠し、沖のリーフにぶち当たる波の高さ、潮騒のすさまじさに目を見張った。砕ける白波は人の背丈ほどもある。そのために、リーフの内側までさざ波が伝わってくる。
 空はどんより曇っている。僕はかつて見た海のことを思い出した。あれは下北半島の海だった。真夏だというのに、寒くてじっとしてることもできなかったっけ。今日は少し暑さが和らいだ程度なのだが、ひどく人が恋しくなる。こういう所に来ると、自分が本当は人間が好きなのだということがよく分かる。
 それに、今晩はユースホステルで、ただ一人で眠ることになるらしい。二時間近くは泳いだろうか。少し疲れたので、三時前には海から上がり、着替えて出発することにした。シュノーケルで魚を見ることもしばらくないだろう。海に向かって、楽しかったよ、有難うと言った。
 周囲には観光客も、島の人の姿もない。日焼けの害を知ってるから、シャツを着て泳いだり、早朝、または日暮前しか泳がないらしいが。帰りはスムーズに平良港に戻れた。おみやげを何にするか、市場の中を歩き回った。ユースホステルに着いたら、午後七時を過ぎていた。夕食はマグロの刺身、グルクンの天ぷら、宮古そば、モズクだった。予想通り、部屋の中は僕一人だった。
 人恋しいので、テレビで「男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎」というのを見てしまった。外はまた雨が降ってきたようだ。明日の今頃は、うちに戻っているんだろうな。(つづく)

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2017年09月14日

「んみゃーち」の宮古島(12)

 島の南部を走っていると、突然、ディズニーランドみたいな建物が出現した。青い屋根と白壁のヨーロッパの城に仰天した。辺りには人っ子一人いないのにと思った。「うえのドイツ文化村」という。明治の初めにこの沖でドイツ商船が難破したのを、住民が救助に当たったことで、ドイツとの友好関係が生まれた。それを記念して、旧上野村(現、宮古島市)に1996年(平成8)に建てられたものだ。記念館には難破の様子を物語るパネルや、ベルリンの街を分断していた壁が展示されている。
 その前を通過して向かったのは、イムギャーマリンガーデンだった。珊瑚礁が沖まで続く絶景で、浅瀬でシュノーケリングするのには最適だからだ。地球が丸いのが感じられるほど、水平線を遮るものは何もない。宮古島に来てまだ一度も泳いでいなかったし。水着に着替えると、自転車とリュックサックを残して海に入る。そこには家族連れがいたけれども、海の家なんかありはしない。岸から10メートルぐらいで背が立たなくなる。
 ふと気づくと、僕一人きりになっていた。生きた珊瑚の周りには、色とりどりの熱帯魚がいた。西表島の星砂の浜よりも魚の数ではまさっていた。魚を追っているうちに時を忘れ、孤独であるのを感じなくなる。(つづく)

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2017年09月13日

「んみゃーち」の宮古島(11)

 夜中は雨の降りが激しかった。朝になって上がった。同室の二人は九時半の船で石垣島へ、船を乗り継いで西表島に渡るとのこと。うらやましかった。五年前に訪れたわけだが、西表島は沖縄の中でも、まだ手つかずの自然が残っている。マングローブが広がる汽水の川は、アマゾンを思わせるほど野性味あふれていた。
「あの光景を見に行くんだな」
 二人が出て行ってしまうと、案の定寂しくなった。ユースホステルの中ではヤモリが「キョンキョンキョンキョン」と鳴いている。本土ではお目にかかったことがない。石垣島にはいたけれども。
 九時半過ぎに自転車に乗って出発。下地町役場(現在の宮古島市役所下地庁舎)の前を通って、来間大橋を渡っていった。昨日の池間大橋からの眺めの方が良かったが、来間島の展望台からの風景は圧巻だった。すぐ間近に橋の全貌が見られ、一直線に海上を伸びる道路も、エメラルド・グリーンの海に映えていた。それを眺めながら弁当を開いた。背後にはサトウキビ畑が広がっている。
 宮古島は池間島と来間島、そして現在では伊良部島とも橋で結ばれている。宮古島が中心になって、周囲の小島を従えた共和国みたいに見える。琉球王国に呑み込まれる以前のように。(つづく)

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