2017年09月29日

筒井康隆の『創作の極意と掟』(1)

 小説を書く技術を習得するためには、昔は小説家に弟子入りしたりしたものだ。実際に小説を書いている人に、自分の作品を見てもらうのも、つてがなければ難しい。それでも、書物の形で創作法が出版されている。古典的なものとしては、木村毅の『小説研究十六講』があり、これほど体系的に創作法が研究された本も少ない。松本清張はこの本を読んで勉強したらしい。
 早稲田大学の第一文学部で、三田誠広が小説の演習を担当していた時期があった。「ワセダ大学小説教室」は、大学生を対象としているから、若い人が読んでも分かりやすい。小説研究の本はまだまだあるが、多くはエッセイの類いであり、それだけ読んでも参考になる程度で、手の内の一部を見せてくれるに過ぎない。
 筒井康隆のこの本は、三十項目余りに分けて、一対一でなければ教えてもらえないような内容を、惜しむことなく披露してくれている。ただ、一から小説の書き方を教えるのではなく、「創作の極意」であるから、ある程度創作を知っている人には、啓発的な情報となっている。(つづく)

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2017年09月28日

「んみゃーち」の宮古島(17)

 おばさんの息子さんは、本土の高校の野球部に入っているそうだ。練習がきついらしいこと、サボりたくて帰郷したかどうかは分からないが、僕がユースホステルを訪れた日に那覇を発ち、羽田行きの飛行機に乗ったとのこと。息子を思う情が伝わってきた。
 ちなみに、宮古島ユースホステルは、二〇一七年の四月に、「宿 タテッチャー」と名称が変更されている。年齢層にこだわらないゲストハウスとなっている。今の若者はユースホステルには泊まらないんだろう。見知らぬ人と交流するのが好きじゃないのか。それ以前に、アルバイトも学費を稼ぐためで、夏休みに旅に出る余裕もないのか。

 タクシーに乗り込んだ。いよいよ僕も、本土に戻る日が訪れた。宮古空港を離陸すると、しばらく西平安名崎と池間島、それに池間大橋を眺めていた。宮古島に着いた翌日の午後、はるか下に見える橋を渡っていたことを思い出した。七時頃まではまだ日があり、凪いだ海を黄金色に染めていた。
 午後七時半過ぎ、那覇上空を通過したが、雲に覆われて何も見えなかった。ただ、八時近くまで西空には緑色の線のような光が残っていた。すでに紀伊半島上空まで達し、一時間ほどで羽田に着陸する。今回の旅もまもなく終わる。宮古島の海は美しかったが、陸地はサトウキビ畑と林ばかりだった。

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2017年09月27日

「んみゃーち」の宮古島(16)

 帰路はサトウキビ畑の間や、珊瑚礁が見える高台の道を走った。熱帯植物園で宮古馬の写真を撮ったりした。本土の在来種と同じで、小柄で素朴な馬である。平良港に入るところで、ユースホステルのペアレントのおばさんが、車の中から手を振ってくれた。
 五時に戻ると伝えておいたのに、もう五時半になっていた。「すぐに戻ります」と言って別れた。みやげ物に古酒を買い足した。ユースホステルに着くと、一階には誰もいなかった。先ほど手を振ってくれたのは、別れの挨拶だったのだろうか。自転車の鍵を返して、
電話でタクシーを呼んだ。玄関で待っていると、おばさんが帰ってきた。
 お礼を言った後、東平安名崎であったことを話すと、おばさんはいろいろなことを教えてくれた。台風の時など、岬の南側のしぶきが北側の崖下まで飛んでいくのだそうだ。海水も飛んでくるため、宮古島では自動車の持ちが悪く、外側とエンジンから錆びていくということだった。(つづく)

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