2017年08月26日

ぼくはネコなのだ(54)

 騒ぎを聞きつけて、おじさんが二階から駆け下りてきた。大学の授業は午後からで、その日は寝坊していたのだった。もし、寝坊せずに出勤していたら、おばあさんもおばさんもいないうちの中で、ぼくは縛り首の刑に処せられていたかもしれない。それも自分自身のせいで。
 おじさんは血相を変えて、-ぼくのことを追いかけてきた。こんなこわい顔してるのは見たことがない。気がつかないうちに、ぼくはおじさんの気に障ることをしでかしたのか。ぼくはあちこちぶつかりながら逃げ回った。頭から何度も火花が出た。袋が目にかぶさってきて、ついに身動きできなくなり、赤い袋に手をかけられてしまった……
 どんなお仕置きが待っているのかと思ったが、おじさんはいつもの笑顔に戻っていた。赤いビニール袋を外すと、おびえているぼくを抱きしめてくれた。
「おまえ、何か後ろめたいことがあるんじゃないか」
 さすが、大学とかいう学校の先生ともなると、ネコの気持ちまで分かるらしい。寝ぼすけとばかり思っていたが、少し尊敬したくなった。授業時間が少なくて、ネコ助けもできるなんて、大学って学校は、案外社会の役に立ってるのかもしれない。
 昨日兄貴を袋だたきにしたから、きっとバチが当たったんだと思った。騒ぎを聞きつけて、兄貴も寄ってきたので、「ごめんな」と謝ったら、「何のことだい?」っていう返事。とぼけてるというより、単に忘れてしまったのかな?(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 04:10| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする