2017年08月09日

ぼくはネコなのだ(51)

 ぼくは一匹でうちに逃げ帰った。しばらくしても、兄貴は戻ってこなかった。日が西に傾いて、えさの時間になっても……。
 何か悪いことでも起きたのだろうか。草むらの途中まで行ったが、足がすくんでしまった。今まで何とも思っていなかった人間の子供が、地獄に住む鬼か何かのように思えてきた。
 あたりが薄暗くなった頃、ようやく兄貴は戻ってきた。しかも、歩き方がよろよろしている。追いかけられて、石でもぶつけられたのだろうか。
「もう会えないかもしれないって思ってたよ。どこか具合でも悪いのかい」
「いや。あそこには食べ物がたくさんあるぞ。子供たちが残った牛乳やら肉やらくれるんで、食べ過ぎて歩くのもおっくうになっちまったんだ。おまえも何か食べさせてもらったんだろ」
 ぼくは聞いているうちに、ばかばかしくなってきた。心配しただけ余計腹が減ってしまった。もう学校なんてこりごりだ。同じネコなのに、どうしてこんなに扱いが違うんだろう。
 ところが、兄貴はちっとも懲りた様子がない。うちの中に入ると、おばさんがいつものように、乾いたえさを出してくれた。ぼくが夢中で食べていると、兄貴は食欲がないのか、お腹を床に投げ出している。
「人間のえさはもっとおいしいぞ。こんなひなたくさい物、よく食えるな。お腹がすいたら、あしたも一緒に学校へ行こう!」(つづく)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:04| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする