2017年07月29日

ネルヴァルの「緑の怪物」について(2)

 物語は「ヴォヴェールの悪魔」に関する慣用句の解説から始まり、その悪魔にまつわる史実が記述される。語源や歴史といった学問の話と、超自然的な悪魔の伝説が結びつけられているのである。
 次いで、空き家や地下墓地(カタコンベ)から、けたたましい笑い声や、グラスのカチカチいう音が聞こえてくる。しかし、地下には酒の瓶しかないはずだから、それは悪魔のしわざに違いないということになる。
 そこでようやく主人公の伍長が登場する。小説の作法からすれば、ここまで主人公が出てこないのは破格である。しかも、この伍長が怪物退治に名乗りを上げたのは、褒賞金でご執心の縫子と結婚するためだった。瘋癲という語を冠したくなるような人物なのである。
「神も悪魔も信じない」と言い放って、酒蔵で伍長が目にしたのは、優雅な姿で踊る瓶たちだった。伍長が見た物が悪魔のしわざか幻かは分からない。精神の病を患っていたネルヴァルが描く幻覚は、鮮明に視覚に訴えてくる。伍長は瓶を抱き寄せたが、うっかり落として割ってしまう。飛び散ったワインは、女の血を連想させる。それが裸体の女の死体のイメージにつながる。連想が連想を生む幻覚の生々しさに、鬼気迫るものを感じたものである。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:11| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする