2017年07月14日

男はつらいよ 寅次郎恋歌(第8作)

 今まで何回見たことだろう。このシリーズの中で「寅次郎恋歌」を見たのは、これで五回以上になる。日本語の教材にシナリオの一部が載っていて、読解の後に学生と見たものである。借りてきたDVDでは、日本語の字幕も表示できるので、江戸弁の早口でも、上級レベルの外国人学生なら理解できた。ユーモアとペーソスは、世界共通の感覚である。
 今回は妹さくらの夫、博の母が危篤になる。葬儀の場面に現れた寅次郎は、妻に先立たれた博の父としばらく過ごし、人間の本当の生活、運命に逆らわない生き方こそ、幸せな生活であると諭される。その場面に現れる竜胆(リンドウ)の花が、寅次郎の求めて得られぬ幸せの象徴として繰り返し現れる。
 今回、寅次郎が惹かれるのは、柴又に喫茶店を開いた未亡人の貴子である。内気な少年学と遊んでやることで、寅次郎は頼もしい人として貴子の目に映る。旅をしながらの人生を夢に抱き、寅さんと一緒に行ってしまいたいとまで洩らす。
 以前までの回とはちょっと空気が異なる。母子家庭の問題を抱え、女手一つで必死に子育てする姿が、単に色気のあるだけのヒロインにはない、ひたむきな印象を与える。初めて寅次郎の生き方に理解を示してくれる女性が現れたのである。とはいえ、このまま家庭を持ってしまったら、寅次郎の旅がらすの生活は終わる。貴子に思いを寄せられたまま、美しい思い出として胸にしまい、木枯らしの吹く夜に柴又を発っていく。このシリーズの中で、趣の深い作品の一つとして印象に残っている。

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:39| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする