2017年07月10日

ぼくがダライラマ?(12)

 ぼくは怒りがこみ上げてきた。自分が遊んでいて、お母さんばかりこき使われているのが、腹立たしくてならなかったのだ。
「なんでぼくはここにいるの? ラサの都に行くんじゃなかったの?」
 お母さんは眠気が覚めたように、ぶるっと身震いした。体を起こすと、ぼくをきちんと座らせてから、声をひそめて言葉を選んで話してくれた。
「これから言うことは、時が来るまで決して口にしてはならないと、お役人に命じられたことなの。だけど、あなたは自分が何だか分かってない……。あなたは観音様の化身で、チベット再興に尽くされた偉大なお方、ダライラマ五世の生まれ変わりなのよ」
 何を言ってるんだろう。ぼくは意味が分からなかった。ある日、年取ったお坊さんが尋ねてきて、自分の顔を眺めて合掌してたけど、そういうことだったのか。ダライラマって、チベットで最も偉い活仏で、王様みたいな暮らししてるらしいけど、その方とぼくがつながってるってことか?
「ぼくはお父さんと一緒に、村でヤクの背中に乗ったり、羊の世話してる方がいいんだ。それに、前世がダライラマだったなんて記憶、全くないんだよ」 (つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:08| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする