2017年07月28日

ネルヴァルの「緑の怪物」について(1)

 僕が大学で選択した外国語は、フランス語だった。一年生は文法や簡単な読み物だけだったが、二年生になると、いきなりフランス文学の作品を読まされた。そのうちの一篇が、ジェラール・ド・ネルヴァルの「緑の怪物」だった。執筆されたのは1849年で、死の6年前である。
 これが初めて読むネルヴァルの作品で、しかもフランス語でだった。読み終えたとき、何ともへんてこりんな話だと思った。にもかかわらず、不思議と心をとらえて放さなかった。ネルヴァルは散文作家というよりは詩人である。詩人であるということは、描かれる内容以上に、言葉の使い方やイメージに神経を使っているということだ。
 詩人のピエール・ルヴェルディが語ったように、互いに隔たった意味を持つ二つの語を、的確に近づけることによって、詩的な驚異というものは生まれる。シュルレアリストの先駆けとされる詩人ロートレアモンは、『マルドロールの歌』の中で「手術台の上での雨傘とミシンの偶然の出会いのように美しい」と書いたが、ネルヴァルの文章は、あり得ないような出会いの驚異に満ちている。(つづく)


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2017年07月27日

首里城の幻影(4)

 その後、北殿を見てから漏刻門、瑞泉門、九慶門を抜けて、円鑑池の前に出た。水面の中ほどに天女橋がかかり、その先に弁財天堂がある。朝鮮国王から琉球国王に贈られた方等経(大乗仏典)が収められていた。その向かい側には、かつては円覚寺があった。鎌倉にある同名の寺院を模して作られたものだったが、沖縄戦で壊滅した。弁財天堂も再建されたものである。ここの風景は五年前と変わっていない。
 次いで琉球国王の陵墓へ向かった。尚巴志によって統一された琉球王国はいったん滅ぼされ、尚円によって引き継がれる。最初の王朝を第一尚氏、尚円以降を第二尚氏という。第二尚氏の尚寧以降は島津氏への隷属を強いられた。石造りの巨大な陵墓は、第二尚氏の王族を埋葬したもので、玉陵(たまうどぅん)と呼ばれている。
 ここも沖縄戦では被害を受け、三年がかりで修復された。遺体はいったん中央の石室に納められ、洗骨後に国王や王妃の骨は東の石室に、他の王族の骨は、西の石室に納められた。高さは十メートル以上、全長は数十メートルに及ぶ。首里城を模した王陵であるが、国王を神と崇める風習は、琉球処分以降は途絶えた。
 最後の王尚泰は、東京に連行された後、一時帰郷を果たしたほかは、東京の屋敷で余生を過ごした。遺言により、遺体は沖縄に運ばれて、国王として玉陵に葬られた。
 とにかく、ここは石の照り返しがひどく、石門の内側には樹木が一本もない。すでに遺跡と化しているわけだが、巨大な王陵は沖縄が、かつては独立国であったことを物語っている。外界とは異なる聖なる場所であり、白い光に満ちあふれて、長く留まることを拒んでいるのが印象的だった。

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posted by 高野敦志 at 02:16| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月26日

EdgeでePubを読む

 電子書籍のePubは、国際的な標準規格として出発した。縦書きやルビなど、欧米の言語にはない日本語の書式も、ePub3以降は表示可能となった。現在では、iPadやiPhoneなどの携帯端末にダウンロードしておけば、オフラインの状態でも読むこともできる。
 一方、パソコンで読む場合には、紀伊國屋書店のKinoppy(http://k-kinoppy.jp/for-windowsdt.html)をインストールするか、ブラウザにプラグインをインストールする必要があった。Googleのchrome(https://www.google.co.jp/chrome/browser/desktop/index.html)なら、プラグインのReadium(http://readium.org/)を、firefox(https://www.mozilla.org/ja/firefox/new/)ならプラグインのEPUBReader(https://addons.mozilla.org/ja/firefox/addon/epubreader/?src=search)が必要だった。Internet Explorerの場合、ダウンロードしたePubファイルは、拡張子がzipと表示されるので、ePubに変更して携帯端末や上述のブラウザで開く必要があった。
 ところが、Windows10の時代となり、OSに新しいブラウザEdgeが搭載された。これによって、ブラウザ上のePubのリンクをクリックするだけで、Edge上でePubが閲覧できるようになった。ツールバーの左から、目次、ブックマーク、検索の項目が並んでいる。表示は縦書きのルビ付き。ツールバーの右側には、フォントの調整、読み上げ、ブックマークの追加の項目がある。それぞれをクリックすると、使える機能が表示される。
 コンピューターによる自動読み上げまでついたのには驚いた。ただし、性能に関してはおまけ程度である。イントネーションがおかしいし、漢字の読み上げも間違えるし、ルビがあると漢字とルビを二重に読み上げてしまう。
 最近の読み上げソフトの進化はめざましいものがあり、ワープロソフトの一太郎プレミアム版に付属している詠太などは、ほとんど肉声に近い自然さで、ルビなどもきちんと読み上げる。それと比べれば、無料で配布されている読み上げ機能は、この程度の物なのだろう。
 最後に、全体的な感想を述べることにする。読み上げを別にすれば、EdgeによるePubの表示機能は、実用レベルの高水準にあると言える。

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