2017年06月17日

ぼくがダライラマ?(7)

 弾き終えたところで、ぼくの頭をなでて体を抱きしめてくれた。何で家族が別れ別れにならなければならないのか、そのときのぼくには分からなかった。けれども、それが避けられないことで、運命を受け容れるという点で、この国の人間は従順なのだということは感じていた。床の上に立ち尽くしていると、お母さんが寝床に連れていってくれた。
 ぼくは眠ったのだろうか。それとも、この家に生まれてからの出来事を思い出していたのだろうか。お父さんとお母さんが、まだ何か話してる声が聞こえた。いちばんつらかったのは、お父さんだったのかもしれない。
 東の空が白んできたようだ。窓からぼんやりした光が差し込んでくる。遠くで鳥の鳴く声がしたが、村人はまだ起きていないだろう。ぼくは着替えさせられた。すでに火が起こされていて、熱いバター茶が入れられた。お父さんが目をこすりながら出てきた。これが最後の食事? お母さんが震える手で、茶碗をお父さんに渡した。本当はまだ話し足りないことがあるはずなのに、ほとんど無口でバター茶で練ったツァンパを口に入れていた。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:33| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする