2017年06月14日

ぼくはネコなのだ(45)

 うちの中に戻されたぼくは、くやしくてカーテンを引っ張ったり、壁をこすって爪研ぎしたりした。母ちゃんの心を狂わし、ぼくらを追い出そうとしたくせに、体を悪くして戻ってくると、いかにも哀れな声を出して、おばさんに情けを乞おうとしてるんだから。
「まあ、そう怒るなよ」
 先ほどまで気が立ってたくせに、兄貴は床に前足を伸ばして、何もなかったような顔をしている。毛並みが白くて上品だから、兄貴ながらもほれぼれするけど、ちょっと鈍感なんじゃないか。
「おまえも年を取れば、あのおっさんの気持ちが分かるようになるよ」
 兄貴だって、ぼくより三十分ばかり先に生まれただけで、まだ一歳にもならないのに、大ネコみたいな口をきいている。おばさんはというと、極ネコの体をふいてやり、えさをやったり、湯たんぽの準備までしてるようだ。さすがに、うちの中には入れる気はないらしいが。
 テーブルでは髪の短いおじさんがお茶を飲みながら、妹であるおばさんの話に耳を傾けている。
「この子たちの身と比べたら、私、放っておけなくて」
「そうか。おれもさっき見たけど、友達が飼ってたネコに毛並みがそっくりなんだよ。あんなきつい目つきはしていなかったけどね」(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 00:59| Comment(2) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする