2017年06月09日

ぼくはネコなのだ(44)

 ぼくらの鳴き声を聞きつけて、おばさんが玄関の方に駆けつけた。一緒に追っ払ってくれるものとばかり思っていたが、どうも様子がおかしい。極ネコに立ち向かう気をそぐために、兄貴の頭をなでている。抵抗できずに、兄貴はゴロゴロのどを鳴らし始めた。
「何でぼくらのなわばりに入ってきたんだよ!」
 ぼく一匹で撃退するには、ちょっと手強い相手だ。威嚇するために、ガーカーうなってやった。しかし、手応えがない。こりゃどういうことなんだろう。よく見ると、相手は息苦しそうに、小屋の前で横たわっている。ゼーゼーいう音まで聞こえてくる。行き倒れみたいである。
「おい、母ちゃんはどうした!」
 前にも話したとおり、この極ネコは母ちゃんと共謀して、ぼくら兄弟をここから追い出そうとしたのだ。相手はだるそうに顔を上げると、かすれたような声で言った。
「あのメスはどっかに行っちまったよ……。病んだオスには用がないとさ……。また、どこぞの若造に誘われて……、おなか膨らましてるだろうさ」
 そこまで言うと、極ネコはまた玄関のタタキに横たわってしまった。また咳をしている。元気でないことだけは確かだ。
 振り返ると、すでに兄貴の姿はなかった。おばさんに抱きかかえられて、うちの中に戻されたんだろう。すぐにおばさんが戻ってきて、ぼくも裏口の方に連れていかれた。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:17| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする