2017年06月07日

ぼくがダライラマ?(4)

 ヤクに乗ったぼくを置いたまま、お父さんはお母さんと一緒に、小走りで家の方に戻っていった。ぼくは心配になったが、雲もなく澄み渡った青空は、くよくよすることなど何もないと告げているようだった。
 しばらくして、黄色い袈裟を着た年配のお坊さんと、お父さん、それにお母さんがこちらにやって来た。ぼくは軽く身震いした。ヤクから下りて、駆けだそうとして足が止まった。お坊さんは目の前まで来ると、ぼくに向かって合掌した。そして、品定めでもするみたいに、ぼくの顔をいろいろな方から眺め回した。
「紛れもない……」
 お坊さんは皺だらけの顔で目を細めて、歯の欠けた口でお祈りを始めた。ぼくをからかっているのだろうか。何だかおかしくなって笑ってしまった。驚いたように、お坊さんは手を引っ込めた。
 見上げると、後ろにいたお父さんは、気味がいいとでも言うように、口もとに笑みを浮かべている。お母さんはいまだに、凍りついたように顔を動かさない。
 お坊さんとお父さんは、その場を離れていった。その途端、お母さんはぼくのことを抱きしめた。しかも、声を押し殺して泣いていた。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:14| Comment(0) | 連載 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする