兄貴の方を見ると、もう戦闘モードになっている。しっぽを横に振りながら、「おい、こっちに来いよ」と挑発してくる。
「この意気地なし! おまえ、おれがこわいんだろ」
ぼくはにらみつけ、兄貴に向かって突進する。兄貴は全速力で逃げていく。ぼくも負けじと追いかける。追いついたところで、兄貴はこちらのおなかを足蹴にして、顔にパンチを食らわせた。
遊びのはずなのに、手加減してくれない。今度はぼくが全速力で逃げ出した。そのとき、テーブルにうつぶしてたおじさんが目を覚まし、こわい顔をして裏口のドアを開けた。思わず、ぼくは外に出てしまったんだけど、兄貴の方は吹きすさぶ風に怖じ気づいたのか、台所の出口の前で立ち尽くしていた。
「出てけ!」
人間の言葉が分からない兄貴も、おじさんが本気で怒ってるらしいことは分かった。身を伏せるようにして、すごすごとおじさんの前を抜け、柿の木の前に出たところで、後ろのドアがバシンと閉められてしまった。(つづく)
「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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