2017年05月15日

ぼくはネコなのだ(36)

 いよいよぼくの番らしい。ふたが開けられると、白い服を着たおじいさんが、目の前に立っていた。正面の鉄のおりの中では、ぐったりした兄貴が横たわっていた。
「兄ちゃん!」
 叫ぼうとしたとき、おじいさんが「押さえてください」と言った。押さえた手は何と、いつものおばさんである。やっぱり、そういうことだったんだな。針のついた管をぼくの体に突き立てた。激しい痛みに続いて、しびれが全身に広がっていく。ああ、これでぼくもお陀仏だ。神さま、仏さま、招きネコさま、来世に生まれるときは、自分の子孫が残せますように……

 ぼくは死んでしまったのだろうか。気がつくと、髪の短いおじさんと、あのおばさん、それに母親らしいおばあさんのうちに戻っていた。ぼくの体はもう三味線になってしまったのかな。三人は何にもなかったように、笑ってるじゃないか。ずいぶんひどい話だ!
 横には眠そうな顔した兄貴がいた。二匹とも化けネコになってしまったのかな。化けて出たにしては、ずいぶんかわいい顔をしている。
「兄ちゃん、ここは地獄なの? それともまだ、三途の川は渡ってないのかな」
「何だか悪い夢でも見ていたようだ。こうして前足も、後ろ足もついている。頭もついてなきゃ見られないだろ。生きてることは確からしいが、何かが足りないんだ」(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:24| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

高野敦志編『高野邦夫詩撰』(ePub)

 高野邦夫は昭和3(1928)年、現在の川崎市幸区に生まれました。太平洋戦争末期に予科練に入隊。戦場に送られる前に終戦を迎えました。戦後は国語の教員を務めるかたわら、詩を書き続けました。日本詩人クラブや俳人協会の会員でした。その詩は自らの戦争体験や動植物、猫や蝶などへの共感、家族、とりわけ母、高野ことへの思いを中心につづられています。中でも『定時制高校』や『川崎』などは、各種の新聞でも取り上げられました。糖尿病や腎臓病と闘いながらも、晩年に到るまで詩作に集中しました。平成9(1997)年、手術後の体力低下に伴う敗血症がもとで亡くなりました。享年は68歳でした。
 すでに長い年月が経ち、父の著作の多くは絶版状態です。そこで、私がそれらから比較的読みやすく、心に響く詩を厳選してここに紹介いたします。下のリンクをクリックしてダウンロードして下さい。なお、原文の改行位置を尊重したために、不自然な位置で改行されて表示された場合は、字の大きさを若干小さくしてご覧下さい。
kunionoshi.epub

 iTunesからダウンロードする場合は、ミュージック→iTunes→iTunes Music→podcasts→当該のフォルダの下に、ファイルが入ります。
 IEでダウンロードした場合は、拡張子をzipからepubに変えて、下記のアプリでご覧下さい。

 ePubはiOSのiPadやiPhoneなどで読むのに適した形式です。iBooksやbREADER(http://breader.infocity.co.jp/)でご覧下さい。Windowsでは紀伊國屋書店のKinoppy(http://k-kinoppy.jp/for-windowsdt.html)が、最も美しくePubのファイルを表示します。Windows8用のアプリのEPUB Reader(http://www.skyfish.co.jp/epubreader.html)でも開けますが、一部のレイアウトが反映されません。

 ブラウザからePubを開く場合、Googleのchrome(https://www.google.co.jp/chrome/browser/desktop/index.html)なら、プラグインのReadium(http://readium.org/)をインストールして下さい。
 firefox(https://www.mozilla.org/ja/firefox/new/)にもプラグインのEPUBReader(https://addons.mozilla.org/ja/firefox/addon/epubreader/)があり、縦書きやルビなどにもようやく対応しました。

 なお、パソコンのiTunesで「購読」したり、iOSのアプリpodcast(https://itunes.apple.com/jp/app/podcast/id525463029?mt=8)でマイpodcastに登録すれば、確実に新しいエピソードが入手できます。


以下に高野邦夫の著作を挙げます。

詩集

『寒菊』(1962 五月書房)
『氷湖』(1978 昭森社)
『燦爛の天』(1980 昭森社)
『定時制高校』(1982 昭森社)
『川崎』(1983 昭森社)
『修羅』(1984 昭森社)
『彫刻』(1985 昭森社)
『曠野』(1985 芸風書院)
『銀猫』(1986 昭森社)
『日常』(1987 昭森社)
『川崎(ラ・シテ・イデアル)』(1989 教育企画出版)
『短日』(1991 吟遊社)
『峡谷』(1993 吟遊社)
『鷹』(1994 吟遊社)
『敗亡記』(1995 吟遊社)
『廃園』(1998 遺稿 吟遊社)

句集

『高野邦夫句集』(1987 芸風書院)


「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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