2017年05月15日

ぼくはネコなのだ(36)

 いよいよぼくの番らしい。ふたが開けられると、白い服を着たおじいさんが、目の前に立っていた。正面の鉄のおりの中では、ぐったりした兄貴が横たわっていた。
「兄ちゃん!」
 叫ぼうとしたとき、おじいさんが「押さえてください」と言った。押さえた手は何と、いつものおばさんである。やっぱり、そういうことだったんだな。針のついた管をぼくの体に突き立てた。激しい痛みに続いて、しびれが全身に広がっていく。ああ、これでぼくもお陀仏だ。神さま、仏さま、招きネコさま、来世に生まれるときは、自分の子孫が残せますように……

 ぼくは死んでしまったのだろうか。気がつくと、髪の短いおじさんと、あのおばさん、それに母親らしいおばあさんのうちに戻っていた。ぼくの体はもう三味線になってしまったのかな。三人は何にもなかったように、笑ってるじゃないか。ずいぶんひどい話だ!
 横には眠そうな顔した兄貴がいた。二匹とも化けネコになってしまったのかな。化けて出たにしては、ずいぶんかわいい顔をしている。
「兄ちゃん、ここは地獄なの? それともまだ、三途の川は渡ってないのかな」
「何だか悪い夢でも見ていたようだ。こうして前足も、後ろ足もついている。頭もついてなきゃ見られないだろ。生きてることは確からしいが、何かが足りないんだ」(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:24| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする