2017年05月12日

西表島は日本のアマゾン(3)

 目の前にはボートが一艘、ロープにつながれていた。数百メートル上流に目をやると、ボートで川をさかのぼっている人たちが見えた。今は鳥の声と虫の声、時折魚たちが立てる水音しか聞こえない。
 ふと、海の方からしずしず音がした。潮が満ちてきたのだ。それも見る見る押し寄せてくる。砂漠に降った豪雨のあとのように。ミナミコメツキガニの退却が始まった。この速さでは、砂の中に潜り込むしかないわけだ。小さな川がちょろちょろ流れていたのに、今や大河のような川幅になっていく。
 僕は橋の上に戻っていた。小川が大河の夢を見る。それが実現する懐の広さ、自由闊達さがこの島にはあるのだ。すでに川は塩を含んで汽水となり、海の魚たちが押し寄せているはずだ。広大な入り江がしばしの間に見せた変貌に、僕は息を呑むばかりだった。西表島に来たのだという実感がみなぎっていた。すでに干潟も半ば海原に戻り、あの蛇行した流れも間もなく海の中に消えるだろう。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 01:12| Comment(0) | 旅行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする