2017年05月11日

ぼくはネコなのだ(34)

 それから数日は、何事も起こらずに過ぎていった。ぼくは何だかこわくなって、うちに入っていく気がしなかったが、兄貴は部屋の中の暖かさに負けて、うちの人が寝るまで入りびたりになっていた。その間、ぼくは玄関前の小屋に入れられた湯たんぽの上で、丸くなっていたのだが。
 ある日の朝、女の人の話し声が聞こえてきた。おばさんが同性の友達を呼んできたらしいのだ。ひそひそしゃべっているので、ぼくは耳を澄ましていた。どうやら、ぼくらのことを話しているようだ。どちらがおとなしいだの、どちらが警戒心が強いだのとしゃべっている。
 空気が冷たいので、ぼくは湯たんぽに座ったまま、隣の小屋にいる兄貴に向かって話しかけた。
「兄ちゃん、気をつけてね。何か支度してるみたいだから」
「えっ、食べる支度かい? けさはいいにおいがするなあ」
 真新しい鉄のかごが正面に置かれ、中には乾いた普段のえさではなく、生々しい肉の塊が置かれている。においの正体はそれだったのだ。その途端、兄貴はかごの中に駆け込んでいっだ。
「ああ、ダメだよ」
 言おうとしたとき、湯たんぽが入った小屋のふたまで閉められてしまった。ぼくはまだ寝てるらしいおじさんに向かって叫んだ。
「助けて!」(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:05| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする