2017年05月27日

ぼくはネコなのだ(41)

 夜遅くなり、おばさんとおばあさんがいなくなると、ぼくらもいったん寝てしまう。しばらくして目を覚ますと、ぼくはお尻を持ち上げて背筋を伸ばしたり、足を前に投げ出して柔軟体操を行う。兄貴も目が覚めたようなので、追いかけっこでもすることにした。
 兄貴の方を見ると、もう戦闘モードになっている。しっぽを横に振りながら、「おい、こっちに来いよ」と挑発してくる。
「この意気地なし! おまえ、おれがこわいんだろ」
 ぼくはにらみつけ、兄貴に向かって突進する。兄貴は全速力で逃げていく。ぼくも負けじと追いかける。追いついたところで、兄貴はこちらのおなかを足蹴にして、顔にパンチを食らわせた。
 遊びのはずなのに、手加減してくれない。今度はぼくが全速力で逃げ出した。そのとき、テーブルにうつぶしてたおじさんが目を覚まし、こわい顔をして裏口のドアを開けた。思わず、ぼくは外に出てしまったんだけど、兄貴の方は吹きすさぶ風に怖じ気づいたのか、台所の出口の前で立ち尽くしていた。
「出てけ!」
 人間の言葉が分からない兄貴も、おじさんが本気で怒ってるらしいことは分かった。身を伏せるようにして、すごすごとおじさんの前を抜け、柿の木の前に出たところで、後ろのドアがバシンと閉められてしまった。(つづく)

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ネルヴァル Nervalの「緑の怪物」(pdf)

 19世紀フランスの狂気の詩人、ジェラール・ド・ネルヴァルの短編「緑の怪物」を新訳でお送りします。夢と現実の間をさまよいながら、シュルレアリスムの先駆的作品を生み出し、20世紀になってから再評価されたネルヴァルですが、今回紹介するのは、ネルヴァルの狂気の側面がうかがえる怪談です。
 作中には多数の固有名詞が出てきますが、余り気にせずに読み進めて下さい。注釈は最低限にとどめました。今回はパソコンですぐに開けるpdf版です。
 以前、「緑の怪物」の要約をブログに載せましたが、今回はガリマール社版の『ネルヴァル全集』第3巻を用いて全訳しました。なお、筑摩書房の『ネルヴァル全集』第4巻には、中村真一郎訳の「緑の怪物」が収録されています。
(注、ジェラール・ド・ネルヴァルをフランス語で表記すると、Gerard de NervalのGerardは、本来ならeにアクサン・テギュ accent aiguが付きますが、文字化けが発生するため、アクセント記号は省いてあります。)

 以下のリンクから、拙訳をダウンロードして下さい。
lemonstrevert.pdf

iTunesからダウンロードする場合は、マイミュージック→iTunes→iTunes Music→podcasts→当該のフォルダの下に、ファイルが入ります。大部分のパソコンにインストールされているAdobe Readerで読むことができます。

 なお、パソコンのiTunesで「購読」したり、iOSのアプリpodcast(https://itunes.apple.com/jp/app/podcast/id525463029?mt=8)でマイpodcastに登録すれば、確実に新しいエピソードが入手できます。


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2017年05月26日

ぼくはネコなのだ(40)

 雪がちらつく寒い日も、ぼくと兄貴はうちの中で過ごすようになった。テーブルのある大きな部屋は、ドアが閉められていて、その先に何があるか分からない。一度だけ、おばあさんがトイレに行くとき、一緒に出たことがある。階段があるから上にも部屋があるようだけど、すぐにおばさんに抱きかかえられて、元の部屋に戻されてしまった。
 でも、うちの中にばかりいると、体がなまってしまう。筋力も落ちてしまう。それに、大切な玉を抜かれてしまって、自分がオスだかメスだか分からなくなりそうだ。オスであることを忘れないように、少しスポーツしなくちゃいけない。ただ、昼間は大人しくネコをかぶってることにした。おばあさんは本当は、ぼくらのこと好きじゃないらしいから。
「早くこのネコ、袋に入れてしまいなさい」なんて言っている。ネコを紙袋(かんぶくろに)に押し込んで、ぽんと蹴りゃニャンとなくなんてされた日には、なくになけない。(つづく)

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