2017年04月26日

ぼくはネコなのだ(28)

 すると、おじさんがすぐに、ぼくの口もとにも、肉の塊を差し出してくれた。頭の中がおいしい味だけになった。思わずのどを鳴らしてしまった。
 おばあさんが立ち上がった。つえをついて歩き出すと、「あっ、いつっ」と言った。顔がこわくなったから「痛い」という意味なのだと分かった。
「あっ、いつっ、あいつ、あいつはどいつ?」とおじさんが歌い出した。
 しばらくして、またおばあさんが戻ってきた。今度は「あっ、いてぇ」と言った。
「あっ、いてぇ、あっ、いてぇ、だれに会いてぇ」
 ぼくはおかしくなって、ニャーニャー笑ってしまった。兄貴は「何がおかしいんだ?」と首をかしげていた。
 おじさんがテーブルの上に、何やら紙をたくさん広げている。
「あしたは何時から授業なの?」
「大学は昼過ぎからだよ」
 だから、おじさんはいつも、のんびりしているのか。どうやら、大学という学校は、教える方も教えられる方も、寝ぼすけが多いと見える。丘の上で子供たちを教えていた学校とは、ずいぶんレベルが低そうだった。
 おばあさんは元の席に座ったのだが、何やら機嫌が悪そうだった。というより、明らかに怒っている。
「私は大学の先生なんだから!」
 おじさんとおばさんが顔を見合わせて笑った。やっぱり、おばあさんは少し、話していることがおかしい。先生だっていうのは嘘のようだったし、もしおばあさんでも務まる仕事なら、よほど子供の数が少ない学校なのだろう。(つづく)

「青空文庫」の作家、高野敦志の世界
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posted by 高野敦志 at 03:47| Comment(0) | 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする